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2018年4月29日日曜日

Fahrenheit 13特集! -新たなる英国ノワールの牙城に注目せよ!-

今回は英国ノワールの新たな牙城として、本年2月にFahrenheit Press内に立ち上げられたばかりのFahrenheit 13の特集である!さてFahrenheit 13とはいったい何者なのか?ここに至る流れはちょこまかあっちこっちで書いてきているのだけど、今一度ここでまとめておこう。
まず初めに、Number Thirteen Pressから始めよう。これは2014年に英国で立ち上げられた画期的なパブリッシャーで、その年の11月より毎月13日にそれぞれ異なる犯罪小説作家の中編作を1冊ずつ、全13冊出版するというプロジェクトを実施。翌2015年12月に予告通り全13冊の出版を終え、その後はパブリッシャーとしては休眠状態にあった。そしてもう一方に英国Fahrenheit Press。パンク・パブリッシャーを標榜し、それ以前より多くのミステリ、ノワール・ジャンルの作品を出版してきたが、近年世界のノワール・ファンから最も注目を浴びたのは、昨年春、数多くの優れたノワール作品を出版しながら力尽きた280 Stepsの突如絶版状態となってしまった作家作品の救済復刊活動であろう。えーと、280 Stepsについては多分調べても日本語で書いてるのワシだけじゃないかと思うけど、とにかくいい本をいっぱい出してたんだよ!それでFahrenheitの他にもDown & OutとかPolis Booksとか現在のシーンを牽引するパブリッシャーからもかなりの作品が復刊されているのである。その辺については去年結構下のお知らせの方で書いてるのでそっちを見てくれよ。そして今年2月、そのFahrenheit PressにNumber Thirteen Pressが合流するという形でFahrenheit 13が立ち上げられたことが電撃的に発表されたのである。そのFahrenheit 13を率いるのはNumber Thirteen Pressの仕掛け人Chris Black。Number Thirteenの最後にはかのPaul D. BrazillやRichard Godwinも登場させた実力の持ち主である。新生Fahrenheit 13のラインナップには280 Steps残党作品も多く含まれているところから、その段取りを付けたのもこの男の人脈ではないかとも察せられる。またしても現代ノワール界に要注目人物登場である。Chris Black。こいつを忘れるべからず!と延々と書いてきたところで、いかにこのFahrenheit 13が注目すべきレーベルなのかはご理解いただけたであろう。このFahrenheit 13の現在のラインナップについては最後にすべてリストアップするが、発足間もない現時点では前述の280 Steps残党の他に元々のFahrenheit Pressからの移行組、そしてNumber Thirteenの再刊が数点というところ。しかし相手はこのChris Black!Number Thirteenの伝統にしたがい毎月13日に刊行されるこれからの新刊には今後のノワール界の中心となる新たな才能も続々登場してくることだろう。さあFahrenheit 13から目を離すべからず!今回はそんな大注目のFahrenheit 13のラインナップであり、かつもはや伝説のNumber Thirteen Pressの作品3作を紹介いたしまするのだ!

と、鼻息荒く始めてみたのだが、本当のところを言ってしまうと、この3作はNumber Thirteen Press特集第1弾として去年のうちぐらいにやるはずだったのだが、昨年来の甚だしい遅れにより延々と引っ張っているうちに、遂に大元のNumber Thirteen Pressの方がこのように進化を遂げてしまい以前のままでやることはできなくなってしまったという始末…。書く方が遅れているから読む方もストップしているというなんとも情けない、本来ならFahrenheit 13に合わす顔がないというところなのだが、何とかここで仕切り直し、今後のFahrenheit 13をきちんと追っていけるよう今回は頑張ってみますのだ!というところなのです。では行くぞ!

Of Blondes And Bullets/Michael Young

まず最初はMichael Young作『Of Blondes And Bullets』。こちらはNumber Thirteen Press第1弾として発行され、Fahrenheit 13になった後も第1弾として再刊されております。

■あらすじ
失業中の建築家Frankは、いつものように眠れぬ夜を過ごし、明け方海岸にドライブに出かける。夜明けの海の波間に見え隠れする銀色の浮遊物。あれは人だ!冷たい海に飛び込み、必死で銀色のショート・ドレスをまとったブロンドの女を岸に引き揚げる。命を取り留めた女は、病院も警察も無用だと言う。放っておくわけにもいかず、現在暮らす交際中の女性が出勤した後の家へ連れ帰り、乾いた衣服を与えた後、住居まで送ろう、と告げるFrankに、女はどうしても急いでいかなければならない場所がある、連れて行って欲しいと頼み込んでくる。
そしてそこからFrankは予想すらしなかった暗黒へと巻き込まれて行くことになる…。

うーん…、この書き方で良かったのだろうか、とちょっと悩んでしまった。つーのは、この作品独特の書かれ方をしていて、それが作品の独特の雰囲気を作り上げているのである。読後だったか、どこかで誰かのレビューでハメット的という書き方をしててなるほどと思ったりもしたのだが。昔、小鷹信光先生がハメットの作風を三人称単数として、『マルタの鷹』でスペードが夜中にかかってきた電話を取るシーンだったかを例に説明してたのを思い出した。この作品も自分の思うところではそんな感じで書かれていて、あらすじで書いてみた部分でも、主人公は最初延々と彼と書かれていて、女を助けて名前を告げたところからやっとFrankとなる。うーん、でもあらすじとして説明しようとすると、やっぱりそれはひとつの記述方法としての手法で、主人公の名前などを隠しておくためのものではないからこういう形になってしまうのだよね。何とかあらすじでも作品の雰囲気を伝えるようにとは心掛けているのだけど難しいものですね。この作品その後も例えばシーンの最初がカメラを移動したり引いたりというようのと通じるような手法で徐々に状況が見えてくるような形だったりという風に、三人称単数的で書かれていて、それが時代設定などは現代のままクラシック・ノワール的というような雰囲気を作り上げているのです。この作品実はその前にプロローグ的な、どこかに監禁されている男が見張りをぶちのめして脱出しようとしているという場面が描かれているのだが、これまで書いた手法の中で、話が進まないうちにはよくわからないシーンそのままで書くしか思いつかなかったので、省略いたしました。話としては巻き込まれ型というもので、独特の雰囲気で読ませる秀作です。

作者Michael Youngはこの作品以前に自費出版による書籍が2冊。うち1冊は私立探偵Harry Veeシリーズの中編作で、ホームページを見ると第2作も準備中とのことなのですが、現在までのところ続きは出ていないようです。経歴としては、しばらく東アジアで暮らしていて、煙草を吸い、スコッチを飲み、黒い服を好み、UFOを信じない人ということです。前述のHarry Veeシリーズを含め2014年以降は新作もホームページの更新もないので近況については不明ですが、さすがにNumber Thirteenでトップを飾っただけの実力ある作家なので、また頑張ってほしいところです。

Michael Youngホームページ

Down Among The Dead/Steve Finbow

Number Thirteen第2弾のこちらの作品も、既にFahrenheit 13から発売中。

■あらすじ
-ロンドン、キルバーン 2008年3月-
部屋まであと一歩のところで胸が苦しくなってきた。昨日の帰りに買い物をすましときゃよかったんだが、結局今朝出る羽目になりこの始末だ。まったくこの年になると身体が言うことを聞かない。バスに乗りゃあ良かったんだがたった2停留所だからな。何とか部屋に戻る。Coopersに行く前に何か食っとかなきゃな。買って来たパンとサーディンでサンドイッチをを作る。ロンドンに住んで3年になる。ハマースミスを出てからずいぶんあっちこっちへ行った。一つ所に落ち着ければいいがなかなかそういうわけにもいかない。
新聞を買い忘れちまった。Coopersへ行く途中に買わなきゃな。賭け屋に行く前に目を通しとかなきゃならない。それにしても昨日の晩だ。店で2人の男が話を聞かせてくれ、と言って来た。身なりのいいやつらだ。その後は酔っちまって何を話したか憶えてない。店を出た時のことも、どう帰ったのかも…。

-北アイルランド、ベルファスト 1988年2月-
その週末、俺は釣りに行くか、サッカーを観に行くかぐらいの予定だったんだ。だが奴から電話がかかってきてこう言うんだ、ちょいとスペインまで行って一仕事してきてくれないか?それが始まりさ…。

現在時制である2008年の老人の一人称の語りと、そこから20年遡る過去の回想が交互に綴られるという形でストーリーが進んで行く。その回想の方は、老人の語りに出てくる2人組に語られているもののようである。老人の語りということで、かなりくだけた感じの口調でダラダラと割と重要でない日常的なことが延々と書かれ、その中に不意に重要なことが混ざってくるような、ちょっと意図的に読み難い形で書かれていたり。話が進むにつれ、実はこの語り手の老人はかつてIRAの末端の細胞として動いていて、回想で語られる20年前のある出来事により、以来素性を隠し逃亡生活を送っているらしいことが見えてくる。ちょっとネタバレになってしまうのだが、敢えて書かせてもらうと、物語の最後になってもこの男は一体自分が何に関わり、どういうことが起こったためにそれだけの長い年月を経て人生の黄昏まで孤独な逃亡生活を送らなければならなかったのか、全くわかっていない。そしてそれが意味があったのかすらもわからない歴史の中で押しつぶされた一人の男の悲しみを滲み出させる、ちょっと異色のノワール作品なのである。

作者Steve FinbowはかのSnubnose Pressからの著作もあった人ですが、『ネクロフィリアの文化史』みたいなノンフィクションらしきものや、アレン・ギンズバーグの評伝といった本も出している、ミステリジャンルというよりはもう少し広い周辺的なところからの作家のようです。中でも米Amazonの著者ページに出てくる『Love Hotel City -12 authors/12 vision of Japan-』という彼が参加しているアンソロジーが気になるのですが、版元Future Fiction Londonがもうなくなってしまっているようで詳細がさっぱりわからず、12 authorsのメンバーすら不明になってしまっている。日本の作家もいたのでしょうか?
というわけで、1,2作共に結構異色作感のあるNumber Thirteen Press。続いて第3弾です。

The Mistake/Grant Nicol

Number Thirteen第3弾となる作品ですが、現在のところFahrenheitからはKindle版は未発売。まあいずれ何らかの形で出ることは確かなのだが、その辺の事情については後述いたします。

■あらすじ
雪のアイスランド、レイキャヴィーク郊外で事故に遭った車両が発見される。シートベルトを着用していなかった女性がフロントガラスを破り投げ出され死亡。逆さになった車内で発見された男性は、辛うじて一命をとりとめる。
そして9年後…。

仕事に出かけるべく支度をしていたGunnar Atliは、いつものように頭痛に悩まされる。そして、次に気が付いた時は、アパートの入り口の雪の路上に倒れていた。すぐには動けず、辺りをそのまま見渡す。ゴミ缶が動かされている。明らかに後ろの何かを隠すように不自然に。後ろに見えるのは、足?マネキンじゃない、人間のだ!そこには全身のいたるところを切り刻まれ、痛めつけられた全裸の少女の死体が捨てられていた。そして、パトカーが到着する…。

捜査に当たるのはレイキャヴィーク警察のGrimur Karlsson。少女の遺体とともに発見された男Gunnar Atliは9年前の事故で一命をとりとめたものの、長い治療生活からやっと社会復帰したばかりで頭部への障害の後遺症で現在も医師の監視下にある人物である。遺体の身元である家出少女とは面識がないと言っていたが、捜査を進めるうち、2人には何らかの関係があったことも見えてくる。知らせを受け到着した少女の父親はAtliに向け憎悪を燃やす。果たしてAtliは少女殺害の犯人なのか?
タイトルが示すように、この作品のテーマはミステイク。一つのミステイクが一人の男の人生を破滅させ、彼はそれに苛まれ続ける。そして、また新たなミステイクが悲惨な結末をむかえる。
結構前にちょっとブツブツ言ってたのがこの作品。この作品舞台がアイスランドと人気の北欧系だったり、ひとつ問題点があったりで、妙な奴に読まれて勘違いの「酷評」をされるんではないかと心配してたのである。で、その問題点。この作品Fahrenheitから他に3作発行されているGrimur Karlssonシリーズの第2作となっているのだが、実はこの作品ではGrimur Karlssonは捜査には携わるものの、そのキャラクターについてはあまり書かれておらず、その人物像を表すような背景や私生活といったようなものも全くと言っていいほど書かれていない。しかし、その辺の理由については割と簡単に推測でき、つまりそれはこの作品そもそもはGrimurシリーズとして構想されたものではなかったが、せっかく新たに立ち上げた自分のシリーズキャラクターのプロモーションにもなるし、ということで物語の展開上不不可欠な捜査を担当する警察官にこのGrimur Karlssonを当てはめたという事情なのだろう。そもそもメインシリーズとは別のパブリッシャーから出ているものだし、ちょっとしたカメオ出演に近いものと考えその辺は割り引いて、Grimur Karlssonについてはいずれメインのシリーズを読んでみればいいか、というのが真っ当な読書人の取るべき行動であろう。しかし世の中にはいつまでたっても辛口気取りがミステリ通に見えるという幼稚な考えから離れられず、とにかく欠点をひとつでも見つけたらそこに固執した「酷評」で「どうだい、オレって見る目あんだろー。」という顔をすることしか考えない馬鹿者もまことに多い。大体さあ、いくらか読書ってもんに慣れれば色々な本のそれぞれの欠点なんてものは見えるようになってくるんだよ。それをボクも「批評」ができるようになったと思い込むのが幼稚な証拠!他人の本に関するレビューを見る人は、世に隠れたミステリ通さんなんかを捜しているのではなく、この本にはどんな読みどころがあるのか、自分の読みたいような本なのかを知りたいんだよ。そういうものも見つけられないようならそんな駄レビュー垂れ流す資格はないし、それが自分に見つからない本ならわざわざレビューする必要も無し、ということ。この作品に戻り、その辺の上手くいってない要素も見分けつつ、ミステイクの連鎖がもたらす悲しい結末という中心テーマをきちんと見据えれば、このGrant Nicolが読む価値のある優れた作家であることもちゃんと見えてくるのですよ。
作者Grant Nicolは実は元々はアイスランドの人ではなく、ニュージーランド出身。こんな赤ちゃんばかりの国はウンザリだとニュージーランドを飛び出し…、あっこのネタは以前にも使ったか…。とにかく子供の頃お父さんの転勤で無理やり連れていかれたわけでもなく、自ら進んでそんな寒そうな国に移り住みここを生涯を過ごす地に決めたという大変な変人。…いや、アイスランドのことを悪く言うつもりはないのだが、何度も言ってるように私寒いのが大変苦手なのだもの…。そして、2014年よりアイスランドを舞台とするこのGrimur Karlssonシリーズを開始し、現在第4作まで刊行中。で、現在はKindle版品切れになっているこの作品についてですが(画像はペーパーバック版より)、そもそもはNumber Thirteenから発行の際にはNumber Thirteenの共通スタイルに合わせたカバーで出ていたのだが、途中からシリーズ物の一作であることをわかりやすくしたいとの作者の意図により、Fahrenheitのものに合わせたカバーに変更されたという形で、もうほとんどそちらに組み込まれていたようなものなので、現在が一時的な品切れ状態でいずれはFahrenheitからの再発行のあることは明らか。ただ、Fahrenheit 13立ち上げの際、Grimur Karlssonシリーズはおそらくはすでに獲得している読者の傾向などからも考えてだろうと思うのだが、ノワール色の強いのFahrenheit 13には移らずそのままFahrenheit Pressからの発行となっている。そんなわけでこの『The Mistake』はFahrenheit 13ではなくFahrenheit Pressの出版スケジュールの方に組み込まれていて、現在一時的な品切れ状態となっているのでしょう。とかごちゃごちゃ考えていたら、とりあえずFahrenheitの本体のショップの方ではもう販売されてたり。多分アマゾンでもいずれ販売されると思うのだが、どうなのでしょうか。だんだん頼りなくなってきたり…。トホホ。ニュージーランド出身ではあるが、やはり当地の空気がそうさせるのか、完全に北欧物というテイストの作風で、オリジナルを作者自身の言語で読みやすいシリーズとして、北欧物ファンは手に取ってみてはいかがですかな。おお、珍しくきれいにまとまったじゃん。やればできるじゃないか、オレ。
※ちょっとGrimur Karlssonシリーズについてはよく把握してなくて少し雑に調べては何度も書き直していたのですが、最後の最後にまた出てきてもう文章修正してつなげるのが面倒になったので別に書きますが、現在Kindle版で発行中の第5作となっている『Tales From The Ice House: An Anthology』はよく見たらシリーズ1~4の合本だそうです。これから読もうという人にはとりあえずこちらがお得。こっちに入ってるから『The Mistake』のKindle版出てなかったんだね。

Grant Nicolホームページ

以上3作が初期Number Thirteen Pressのラインナップ、いずれ劣らぬ個性的な作品ばかりで、イギリスのこのシーンの層の厚さを感じさせるものでありました。…ってホントは去年ぐらいに言ってなきゃなんなかったんだよな、まったく…。まあ、かくしてNumber Thirteen Press作品という形で追っていくことはできなくなってしまったわけですが、もちろん言うまでもなくこれはステップアップの進化である。つーわけでこれで何とかちょっとだけでも借りを返せたということにして、今後はこれまでのNumber Thirteen作品をも含む新生Fahrenheit 13の進撃を深く注目して行くものであります。

というわけで何とかかんとか片を付けたところで、最初にお約束しました現行Fahrenheit 13のラインナップについて軽く解説。現在2018年4月時点でFahrenheit 13作品は全21作。Number Thirteenからの作品が9作、280 Steps残党組が5作、残り7作がFahrenheit PressからFahrenheit 13への移行組という内訳となっております。まあ今の時点ぐらいしか意味はない区分けだが、自分的にはどれから読もうかなー、という目安にはなったり。とりあえずこの順番で改行ぐらいの区分けはしときます。まあどれも早く読みたいのには変わりはないが、以前その数の多さゆえに手をこまねいていたFahrenheit Pressものが少し手が付けやすくなったか。まずはJo Perryの犬の表紙のやつとか読みたいっすね。しかし、こうして自分の好みのノワール系がFahrenheit 13へまとまったからといって、Fahrenheit Press本体を無視してよいわけではない!280 Steps残党ながら13へは移行しなかったSeth Lynch作品もあるし、今年になって出版された公募作品によるアンソロジー『Noirville』もかなり気になる。そもそも今回登場のGrant Nicol、Grimur Karlssonシリーズだってまだ読まねばならんしね!立ち上げよりほぼ3か月、毎月13日の発行でここまでは3冊ずつNumber Thirteenタイトルを再発し、このペースだと来月でGrant Nicol『The Mistake』を除く全12タイトルがそろうわけなのだが、さてそこからが見物!一体このChris Blackが何を出して来るのか?とりあえずは期待しつつ見守りたいところです。英国ノワールの新たな動きに注目すべし!

さてさて、如何かね?一昨年の秋ごろにはかの『Thuglit』が終了し、昨年春からはBlasted Heath、280 Stepsの相次ぐ撤退をお伝えし、その度に奴らが倒れても新たに彼らの遺志を継ぐ者は現れるのだ、と言い続けてきたものだが、「そうは言っても実際にはちょっと盛り上がってた小パブリッシャーのノワールなんて終わるんじゃねーの?」とか思っていたのでは?ならば見よ!英国ノワールのこの快進撃!ああ、Near To the Knuckleについても早く語らねば!そして昨年秋の登場より気を吐き続ける『Switchblade』は早くも第5号を発行!アンソロジー戦線には新勢力『EconoClash Review』も参戦!更に、Down & Out傘下になり息を吹き返した我らがAll Due Respectからは本年の出版予定が発表され、そこにはその辺のシーンで頭角を現してきたやつらの名前がずらりと並ぶ!(All Due Respect;ADR’s 2018 Schedule)世にノワールの血を受け継ぐ者があり、ノワールを求める声がある限り、ノワールは絶対に終わらんのだ!今後も当方もふんどしやら紐ビキニやらを締め直し、奴らの闘いをお伝えし続けるものでありますよ!

Fahrenheit Press/Fahrenheit 13

【その他おしらせの類】
いや、何つったってまずはこれしかないだろう。遂に出ました!エイドリアン・マッキンティ、ショーン・ダフィ第1作『コールド・コールド・グラウンド』!!まずとにかくは、早川書房が目を覚まし、小手先の瞬間的な効果しかないばかりか場合によっては誤解により無意味にシリーズ全体の評判を落としかねない情報に頼るような売り方をやめてくれたことには本当に安堵しているよ。ちょっとあんまり言い過ぎたんで誤解している人がいるといけないから言っとくけど、その情報自体が悪いと言ってるわけではないし、今までもそんなことは一言も言っとらん。私は最初から、あまりその作家の情報も得ないまま、その作家の作風とはちょっと異質な情報ばかりが独り歩きしているのを真に受けた、上にも書いたようなケチをつけることしか考えていない低劣な輩が無意味に作品を貶めることにより、やっと翻訳が出た本当に優れた作家の作品の今後の出版継続が阻害されることを危惧しているだけなのである。とにかくまずは何より。私もオビもきちんとつけたまま読んでおります。まあとにかく書店で見つけた日にすぐに購入してはあるのだが、読みかけのを先に片づけたりで、まだやっと読み始めたばかりで感想の方は、次々回にというところなのだけどね。しかしそろそろ感想とか出てるところもあんのかな?まあ当方としては変なもん見ちまうとなんかもう物理的にぐらいに健康に悪影響を及ぼしかねないんで、一切見る気もないし、この画像のアマゾンのリンクもそれ取りに行ってうっかりなんか見ちまわないようにかなり早めに持ってきてるしね。次々回はこれをコピーすればよし。しかしまだまだ序盤ながら、のっけからのマッキンティ節にマッキンティノリにもううっとりだよ。ちょっと読み始めた人なら気になってるだろうアレについてだけは言っとくか。序盤から会話の中でちょくちょく出てくる返事の「あい」ってやつ。これはもう英国方面のものを読んでりゃおなじみの「Aya」ってやつなんだろうな、と思いながら、アマゾンでKindle版のプレビューをダウンロードして照らし合わせてみたところ、やっぱりそう。実際のところかなりよく目にするやつだし、なんだか正確には思い出せなかったりするのだけど、多分アイルランド限定ではなくてもう少し英国近辺で広く使われていると思うのだけど。何とか辛うじてきちんと思い出せるところでは『ザ・ボーイズ』のスコットランド出身であるウィー・ヒューイもよく使ってたはず。アイルランド限定じゃないけど、源流というとこなんだろうかなと思う。まあその辺詳しい人もいるんでしょうね。もしものために、とりあえず推測で適当に言ってごめん、とは言っとく。会話の中で独特のリズムという感じになってるものだけど、そんなに意味はなくて、わざわざこんな感じの違和感のあるのを作らなくてもその場に応じて「ああ」とか「うん」とかいくらでもやりようはあるところ。だが、私は敢えてこれを評価するよ。これは全く違う文化環境の全く違う言語で書かれた作品なのだよ。そこには独特のリズムもありそしてそれゆえに美しい文章なのだが、それをそのまま日本語に変換しようなんていうのは土台不可能。だが多くの誠実な翻訳者は、それをなるべくオリジナルに近づけたいと努力する。そしてこれはその誠実な努力の一つである。多少違和感はあっても、まあちょっと変わった挨拶をしてるところなんだろうな、と思ってればすぐに慣れる。だが、なんかこれを翻訳ケチ付けポイントとしてチェックして「最後まで気になった」ことにしようとしてる奴いそうだよねえ。あーやだやだ。意味だけ抜き出して日本語で書けば翻訳が出来上がるなんて思ってる奴は結局本をあらすじレベルでしか読めない連中とたいして変わらないんだよ。しかし、ワシもなんだかいつもこんな言い方ばかりするから角が立つのかと思うので、今回はちょいとよくあるお笑い風にやってみようか。翻訳ミステリレビューあるあるー。なんか海外の友人だかあの世の達人だかに勧められたとか言って始めて、さも俺は英語がわかるからって感じで翻訳だけこき下ろし、ろくな感想も書かず尊大に何か言ったような顔してる奴ー。どおー?笑えましたー?
それからちょっと読んだあたりでダフィが新聞でヨークシャー・リッパーの記事を読んでるシーンがあったのだが、なんだか日本限定タイムリーな感じで先日CrimeReadsってところにマッキンティのデイヴィッド・ピースのヨークシャー四部作についての評が掲載されました。ちょっとあっちこっちバタバタしててまだちゃんと読めてないのだけど、興味のある人はこちらからどうぞ。(CrimeReads:The Grim, Potent World of David Peace)

続きましてコイツ。何か新しい情報見つけたらとにかく知らせる作家のひとりドゥエイン・スウィアジンスキー情報です。遂にスウィアジンスキーの作品があのHard Case Crimeから!と言っても前にもお知らせしたTitan ComicsでやってるHard Case Crimeブランドのコミックス・シリーズの一つなのだけど、文句のあるやつはいないよな?もはや脅迫口調…。タイトルは『Breakneck』!今年8月から刊行開始とのこと。そして第1号のカバーはなんとあの数々のHard Case Crime作品の素晴らしいカバーを描くFay Daltonのこれです!大変楽しみですよね。ねっ!
そしてスウィアジンスキー関連でもうひとネタ。こちらはまた世界のジェイムズ・パタやんのwith作品。子供向けのお笑いなのかな?かなり強烈なユーモアセンスのスウィアジンスキーだが、お笑いメインのものは読んだことないので、これはこれで楽しみ。これはいつものBookshotsではないようだけど、同様にパタやん自身による出版のようです。しかしこのくらいになると自費出版ではなくオレ様出版社っすね。

とか何とかまたモタモタとボンクラなこと並べているうちに、ついさっき遂に奴がエドガーとっちまったじゃん!ジョーダン・ハーパー!去年ぐらいからずっと読もうと思ってたのに、また遅れを取った…。とりあえずはまた一昨年のクリス・ホルムみたいに電撃的に翻訳が出る場合もあるからもう少し様子見るか。こいつは前からワシが目ぇかけてる奴だからいい加減に出したり雑に毎度おなじみ○○の一つ覚えを始める奴がいたら承知せんからなっ!なんかまだマッキンティについては言っとかなきゃならんこともあるような気もするのだが、またちょっと遅れ気味だし、早く次もやらなきゃならんし、読まなきゃならんものも山積みなのだしで、今回はこの辺で終わるっす。ではまたね。


●Fahrenheit 13





●Grant Nicol/Grimur Karlssonシリーズ




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