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2017年11月2日木曜日

今回は色々

ちょっと前にぼやいてたのだけど、どうもここんところ割と有名どころに偏ってしまってる感じで、まあ最近上げるペースが遅くなってるというのも原因なのだけど、そんなわけで今回はあんまり有名じゃないどころだったりもするのだけど、気になってるのをいくつか読んでまとめて紹介することにしました。とりあえずは読んだ順番で特に並びに意味はありません。気取ったヌケ作が誰かの猿真似で、不可能犯罪でも国際的陰謀でもないので「よくある話」とかレッテルを貼ってみせる類いの、イカスチープな犯罪ストーリーが目白押しですぞ。

■The Black-Hearted Beat: Book 1/Jason Michel

まず最初に登場は、以前英国犯罪小説アンソロジー『True Brit Grit』で紹介しました(True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第3回)ウェブジンPulp Metal Magazineの主催者Jason Michelの作品です。

○あらすじ
子供の頃、俺の左目数センチメートルのところを銃弾がかすめた。
こんな話をするのは、別に同情やら驚きを求めてるとかいうわけじゃない。単なる自己紹介さ。あんたにこの話をしているのがどういうやつか知っておいてもらいたいだけのことだ。
その日、俺の頭をそれた銃弾は俺の耳の上を削り取って行った。もちろん、耳はまた生えてきたりはしていないさ。
そしてこのどん底の吹き溜まりで俺の周りを囲んだ奴らはわめきたてる。早く引き金を引きやがれ。

俺は死んだ男だ。空っぽの薬莢。遠く離れたどこかの村で銃弾を放った後の。

そして俺は頭に押し当てた銃の引き金を引き、そしてハンマーが空の薬室をたたく音を聞く。

俺の向かいに座っている男は時間を無駄にせず、ただちに引き金を引いた。閃光。銃声。そしてダーク・レッド。俺は飛び散った奴の脳髄を頬に感じる。

目の前の金をかき集めながら、束の間、世界は何故俺をこんなに長く生かしているのか、と考える。

そして俺は取り囲んだ人込みをかき分け、Brysonが近づいてくるのに気づく。
「奴を見つけたぞ、Jude。」

「奴はここにいる。」

主人公Jude Mortimerは、かつて戦場カメラマンで、アフリカの戦場を取材中にOdongo少佐という男の何か後ろ暗い秘密を目撃してしまったらしい。そして現在、そのOdongoが彼と同じくこのロンドンにいることを知る。そしてその直後、Judeは逮捕される。もちろんOdongoによる密告だ。奴は自分の秘密が明るみに出る前に俺をつぶす気だ。留置場からJudeを救い出したのは唯一の肉親である姉のNell。子供の頃、両親を亡くした自動車事故から生き残った二人だが、Nellはその後車椅子での生活を余儀なくされている。車内で目の前に突き付けられたスマートフォンにはいつの間にかネット上にアップロードされた映像。そこでは彼自身が頭に押し当てた銃の引き金を引いていた。
視聴数は98000から更に上り続ける。
Shit.
俺は有名人だ。

ちょっと何も把握しないままとにかく読み始めたのですが、こちらBook 1は30ページほどで、現在Book 4まで刊行されており、それで1本の長編(中編?)を構成するようです。その第1巻は以上の通り。このJason Michelという人、『True Brit Grit』で読んだ時も感じたのだけど、ちょっと独特のダークな感覚を持ってる人で結構気になっていました。そっちのはかなりホラーに近いやつだったのだけど、もっと犯罪小説方向のこの作品でも、妙に血なまぐさいざらざらしたような独特の、ちょっと人によっては「嫌な」と表現するかもしれないぐらいの独特の感触がある。この第1巻ではまずキャラクターと設定を揃えたところで、物語はこれからという感じです。30ページぐらいの全4巻なので、全部読み終わってからやるべきかと思ったけど、とりあえずどんどん多くのを紹介しなければ、と進めてしまったのだけど、やっぱりちゃんと最後まで読むべきだったかなあと思い直してたりもするなかなかの先に期待の作品です。いや、いずれは最後まで読んで何らかの形でちゃんとやりますです。ちなみにこの作品、カルト的なネオノワールポッドキャストがベースになっている、と解説に書いてあったりするのだけど、ちょっと調べてみたのだけどその辺はわかりませんでした。
作者Jason Michelは、前述しました英国のウェブジンPulp Metal Magazineの主催者。なんでも「自主的追放」というのでヨーロッパ方面を放浪しているようで、この作品はイタリアで書いたそうです。変人です!(キッパリ!)この作品の他には現在のところ『The Death Of Three Colours』がそこそこの長さのホラーであと中編やアンソロジーの参加といったところで、なかなか本格的に作家活動に乗り出してくれないようには見えるのですが、今後に大いに期待。これの続きも早く読むよー。
こちらKindle版の発行がちゃんと書いてなくて自費出版のように見えるのですが、実はNear To The Knuckleからの出版で、巻末には広告も載っています。Near To The Knuckleは英国のウェブジンベースのパブリッシャーで、昨年から今年にかけては英国犯罪小説リーグのドンPaul D. Brazill大将の中編3本をはじめとするコアな犯罪小説作品を立て続けに発行し、英国のこのジャンルで強面な存在感を放っているところ。ホームページを見ても出版リストが無くて、この作品のように発行元が掲載されてないのもあるのではとちょっと不安なのだが、とりあえず見つかる限りのを載せときました。

Pulp Metal Magazine

Near To The Knuckle


●Jason Michel




●Near To The Knuckle





■Double Tap: Two Shots of Central California Noir /Christopher Davis/Todd Morr

続きましては、新進気鋭の10th Rule Booksからの中編2本立て。最初に言っとくけど、この本Kindleで開いてみると、なぜかページ数が128ページまでしかカウントされない。128ページを過ぎるとあとは最後までずっと128ページ!事情は分からんけどなんか128ページまでしかカウントできないフリーソフトとかでKindleに変換したとか?まあ、手作り感あっていいじゃん。アマゾンの販売ページで見てみたらちゃんと172ページになっていました。80ページぐらいの中編の2本立てです。

Setup/Christopher Davis

○あらすじ
ボスからの指示で、ヴェガスからカリフォルニアへやってきた組織の荒事師MarzanoとValentini。組織の一人De La Rosaとの待ち合わせの積み下ろし所に着いてみると、取引の話し合いのはずがいきなり銃撃戦に。敵は逃したが見せしめに火を放ちその場を去り、地元を仕切るFrankieと合流した3人。最近メキシコの連中がカリフォルニアの縄張りに入り込み、好き放題してやがる。ちょいと叩いて国境の向かうに送り返してやらなきゃならねえから力を貸してくれ。そして縄張り内のメキシコ人の拠点にお礼参りを仕掛ける4人。ちょいと熱くなりすぎてきちまったからしばらく町を出る。サリナスの奴らのでかい金づるをつぶしに行くぜ。しかし、敵のでかい拠点を襲撃し、バカンス気分になったところから雲行きが怪しくなり始める…。

男の世界!!暑苦しい感じの男ばかり出てくる!お礼参りを重ねる前半あたりではアメリカ版仁義なき戦いみたいかなとか考えていて、その一方で出てくる人は「ザ・ソプラノズ」みたいなのを思い浮かべていたり。そういやまだ「ザ・ソプラノズ」半分も観れてないや…。それぞれにそんな感じでお好きなギャング映画を思い浮かべながら読むのもいいんじゃないでしょうかという作品。終盤の決闘シーンではウエスタン風味もあるかな、と思っていたら、やっぱりウエスタンも書いてる人でした。タフな悪党が丁々発止の男の世界でやんした。
作者Christopher Davisはこれが読むのが初めてで、あまり情報がないのですが、米Amazon.comの作者自己紹介を読むと(日本のアマゾンでは表示されず)、孫が3人とか書いてあるので、リタイア後好きな小説を書き始めたという感じかも。あ、ところでCentral Californiaっていうのは中部カリフォルニアぐらいの解釈で良いのだよね?とにかくそこに在住とのこと。10th Rule Booksからもう1冊中編が出ている他には、Solstice Publishingというところからもいくつか作品が出ています。その他、Dead Gun Pressのアンソロジーや、あのAlec Cizakの「Pulp Modern」にも作品を発表しています。

Fiero/Todd Morr

○あらすじ
1980年代後半。中部カリフォルニアサリナスでガソリンスタンドで働きながらドラッグ商売にも励むAndy。だがこんな田舎町で商売していても、来るのはハッパ目当てのガキばかり。高校時代の親友でハリウッドでポルノ男優になったLanceから預かったコカインもさっぱりさばけやしねえ。俺もいつかマイアミ・バイスに出てくるみたいなフェラーリに乗れる身分になれないもんか。さもなきゃポンティアック・フィエロ。あれなら結構フェラーリに似てるからなあ。だが、そのLanceのコカインは付き合ってる彼女が元カレの売人からくすねたものだった。そしてその売人Gordonは大口径の銃を片手にLanceのハリウッドのアパートに乗り込み、コカインの在り処を聞き出し、縛り上げたLanceをバスタブに残し、サリナスへと向かう。ダチを片付けてコカインを取り戻したら、次はおめえの番だ。一方サリナスでは地元のバイク・ギャングEddieとHackが、こちらも自分たちが精製したコカインを預けたもののさっぱり金にできないAndyに業を煮やし、居所を探し始める。更に売人Andyを与し易きとみた地元の不良も家から銃を持ち出し…。そんな火中の栗となっていることにも全く気付かないAndyの運命は?

こちらはちょいと脱力系の2流3流の悪党チンピラがひしめき合うスラップスティック風味もあるクライムストーリー。タイトルFieroの意味もお分かりいただけたでしょう。バイク・ギャングらの作ってるのが「hillbilly version of cocaine」!「ブレイキング・バッド」とか好きな人は雰囲気わかるよね。そういや「ブレイキング・バッド」もまだシーズン2までしか…。とか考えてるとまたしばらく休んでひたすらそういうの観て暮らそうか、みたいな気分になっちまうよ。トホホ…。中部カリフォルニアでハリウッドからも車で4時間ぐらいというところだけど、コカイン買うやつがいないという田舎町が舞台。前American Monstersの時にブツブツ言ってたノワールは田舎へ向かっているので「ブレイキング・バッド」辺りまでカントリー・ノワールに入れる、というような流れの作品の一つでしょう。そっちでも書いたのだけど、コミックの方なので読んでない人もいるかもしれないので、この辺の考えについては旧All Due Respectのサイトで読んだMatt Phillipsによる映画『ディア・ハンター』はノワール的なものの土壌となっているアメリカの地方の底辺層の若者を描いたノワール作品であるという考察「The Deer Hunter: American Noir in a Classic Film」が大変役に立つので再度お勧めします。
作者Todd Morrはあの280 Steps残党の一人。絶版になってしまっていた『If You're Not One Percent』がつい先日Fahrenheit Pressの救出作戦により再版されました!よかったね。しかしこのTodd Morrさん、実はかのSnubnose Pressの残党でもあったのです。そちらからの『Captain Cooker』も今年この10th Rule Booksより再版され、更に続編『Best Laid Plan of Idiots and Fuck-Ups: A Cooke Novel』も出版されています。他にSpanking Pulp Pressというところから長編も2冊あり。実力はあるのに運がなく今ひとつ大きい波に乗れないでいるところなのかもしれないが、今後に期待のノワールジャンル注目作家の一人です。

そんな感じのそれぞれに個性的でなかなかに読みごたえもあるお得な中編2本立て。カバーがショボいとか、ページカウントが変とかなんて一切問題なし。要は中身ですぜ。

さてその10th Rule Booksについてですが、新進気鋭!とか盛り上げてみたが、昨年の発足以来今回の2人ともう一人の作品をボチボチ出しているというところで気鋭というよりは、まあマイペースという感じかも。で、そのもう一人がBodie Myersという人でどうもこの人が自分の本を出すために俺レーベルとして立ち上げたものらしい。最初のリリースが昨年7月のこの人の『The Walking Funeral: Hell - Book 1』という作品で、この時点ではアメリカ国内のみのオプションで販売。そしてその後、多分みんな中部カリフォルニアの車で行けるぐらいのご近所作家Davis、Morr両氏が加わり、おそらくは作品の出版経験も多いMorrさんが「いや、もっと世界中から買えるようにした方がいいよ!例えば日本とかにだって変わり者もいるし。俺の出した本みんな日本から買ってくれたやつもいるよー。」というような助言をしたのか10月リリースのDavis、Myers両氏の作品からは日本からも購入可能に。続いて12月にはこの2本立て。今年に入り、Morrの旧作新作の刊行を果たし、遂にMyers『Hell』シリーズ第2作も今月刊行となっております。実はhard boiled supernatural action horrorなるいかにも面白そうな肩書の『Hell - Book 1』もここでちゃんと日本からも買えるようにしてくれよー、とクレームをつけるつもりでいたのだが、つい先日の第2作刊行に合わせ日本からも購入できるようになっていました。よっしゃ、いずれは読むからね。ところでこのMyersとMorr、中部カリフォルニアご近所以外にもメタル好き仲間らしく、どっちのプロフィールにもギター、って入ってたり、10th Rule Booksのホームページにも「No, you're wrong - These are the Five Best Guitar Solos of the 80's」なんて記事もあったり。Morrの作品の設定が1980年代になっているのは、これ携帯のある現在にするとすれ違い的なストーリーが成り立たなくなるという理由かと思っていたのだけど、好きな80年代メタルへの思い入れというのもあるのでしょうね。(作品中にも言及あり。)こんな愉快な連中(お前殊更愉快に仕立て上げてないか?)の10th Rule Books、今後も期待して注目して行きたいものですね。

10th Rule Books


●10th Rule Books



●Christopher Davis



●Todd Morr



■HIRED GUN (Culvert City Crime Files Book 1)/James R. Tuck

少し前にAnthony Neil Smith先生がこの人の近作『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』を高く評価していて、Smith先生が薦めるならチェックせねば、と調べてみたら結構前にTuck氏のこっちのを無料で出ていた時に入手していたのに気付き、ならばこちらから先にという感じで読んでみたのでした。
こちらはタイトルにもあるように架空の悪徳の街Culvert Cityを共通の舞台とした短編集。まず収録作品のタイトルは以下の通り。

  • Big Tony Likes A Show
  • Respect
  • Cancerstick
  • Caught
  • Security Check
  • Teachable Moment
  • Boots On
  • Treatment

全72ページの短編集で、前書きあとがきの他、各作品の前に軽い解説もあったりして8本の作品が収録されているというわけで、それぞれの作品はかなり短い。2、4、6番目の作品は各1ページ。1、3、5、8には共通のキャラクターである小指のない男が登場する。殺人も含めたヤバい仕事を独りでこなすギャングで、請負のようにもどこかの組織に属しているようにも見える。全体的な印象を一言で言うなら非情。結構描写も緻密という感じで、少しクラシックな雰囲気もある。全体的によくできた話で良く書けていて文句のつけようはないのだけど、ただ読む側として言わせてもらえるなら残念ながらちょっと短すぎる。長くてもフラッシュ・フィクションというサイズで、基本的にワンシーンの一幕劇で、全体読み終わってちょっと食い足りなかった感じになってしまう。その中で、7のみが自分の過去の経験をもとにしたという話で、ちょっと異色。トレーラーハウスに住む主人公がある事情でたちの悪い近所のドラッグの売人の住むハウスのドアを蹴破るという話。長さとしては変わらないのだけど、いろんな意味でこのくらい動きがある作品がもうちょっとあったらよかったのだけどね。しかし作者の写真やらこの作品の内容を見ると、結構この人強面だったんじゃないかな、みたいな想像もされたり。
作者James R. Tuckは代表作がオカルト・バウンティ・ハンターDeacon Chalkシリーズということ。あんまり私には関係ない方面かな、と思ったのだけど、本を見てみたら銃を片手のスキンヘッドのマッチョが!(下リスト参照のこと。)いや、こういうやつなら大いに関係あるじゃん!他にもいくつか著作はあり、やはり主にホラー、ファンタジー傾向か。何かそっち方面ではベストセラーらしいDebbie Viguieという人との共作で「Robin Hood: Demon Bane」シリーズというのを英大手Titan Booksからも出しています。前述のDeacon ChalkシリーズはKensingtonというところから出ていて、この『HIRED GUN』はBlammo! Booksから出版されている。どうもTuck氏の個人出版社らしく、Smith先生推薦の『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』やDeacon Chalkの中・短編集なんかもこのBlammo! Booksから出ています。メインワークとはちょっと違うものを自分で出してるというところなのでしょう。いかにも力有り余っている感じだしねえ。このCulvert City Crime Files Bookは今のところ残念ながらこの1冊だけ。もっと長いのが読めるといいなあ。とりあえずはSmith先生推薦のをなるべく早く読んで、できれば筋肉オカルト・バウンティ・ハンターの方も読んでみたいというところです。今米Amazon.comの著者ページの自己紹介をよく読んでみたら、プロのタトゥー・アーティストとも書いてありました。Tuckさんがどのくらい強そうか見てみたい人は以下のホームページへのリンクから!

James R. Tuckホームページ


●James R. Tuck
○Deacon Chalkシリーズ




○Robin Hood: Demon Baneシリーズ



○Blammo! Books



○その他



■Crime Factory Issue 19

これについては随分前に第1集を読んでそのことも随分前にちょろっと書いたのだけど、以来全然進んでなくてごめんなさい。やっと最新第19集を読みました。オーストラリア発犯罪小説アンソロジー!えーっと、ホントは1作ずつちゃんと書くべきなのだけど、ちょっと余力もないので概観という形のさせてもらいます。また、作者についてもそれぞれに自発的追放者や80年代メタル好きともだち趣味ギターや筋肉オカルト・バウンティ・ハンターといった特筆すべき個性的な作風性癖をお持ちかもしれないが、その辺についてはいずれまたお会いした時に、ということで。ではまず収録作品と作家を。

  • 'Open The Evil Window Of Death' Revisiting An Unsolved Crime/Benjamin Welton
  • Life by the Sword/Kathryn Hore
  • A Golden Yellow Cage/J. J. Sinisi
  • Eroll de la Vars Discovers the Equilibrium of Water/Robb White
  • Coyotes/Adam Matson
  • A Ticket to Paradise/James Breeden
  • Work Away/Rob Pierce
  • Open Carry/Tony Knighton
  • The Repulsion Box/Tom Leins
  • The Dilemma/Mike Penn
  • If You're Looking For A Murder Land, Go To Maryland/Benjamin Welton

最初と最後にBenjamin Weltonという人が書いているのだが、これはエッセイ。最初の方は実録犯罪レポートみたいなものかと思ったのだけど、後半の方はハメット、ケインを産み出したメリーランドがいかに暗黒地帯かという話になる。1つのエッセイを前半と後半に分けたもので、内容は興味深いのだけど、分けられちゃったせいで前半後半のつながりがいまいち掴みにくく、まとめ載っけてくれた方が良かったかなと思う。
続くショートストーリーは最初から。オーストラリアの作家Kathryn Horeの作品は、昔街を仕切っていたが裏切りで殺されかけたタフな女が妹分にけじめをつけに帰ってくるという、現代劇だけどマカロニ・ウェスタン風の香りもする話。エンニオ・モリコーネが聞こえてくるぜ。
続くJ. J. Sinisiはニューヨーク在住。フットボールのスターにスキャンダルを仕掛けて強請ろうという計画に安易に乗ったストリッパーの女性だったが…。チープな悪党の末路。
次のRobb Whiteはオハイオ在住で私立探偵Thomas Haftmannシリーズを何冊か出してる人。ちょっとこれ主人公が何の仕事をしてるのかよくわからなくてそれが最後まで引っかかってしまった。手段を選ばずライバルとなる同僚を汚い手段で次々と蹴落とし、会社のトップに近づいた男だったが…という話。会計士のようにも見えるのだけど。内容はそんなに悪くないのだけど、ちょっと残念。
続くAdam Matsonはこちらもアメリカ、メイン州出身。著作は現在のところ短編集1冊あり。舞台はメイン州の田舎町。母親と娘と3人で農業を営む痛めつけられ続けた女性がどん底で見せる反撃!このアンソロジーの中で個人的には一番強く印象を受けたカントリー・ノワール。人と人との嫌なつながりとか、単純な感情移入とはまた別の説得力で、等身大、という感じのキャラクターが見えてくる。多分このアンソロジーの中では一番長い作品だと思うけど。とりあえずはちょっと名前を憶えておきたい人。
次はノースカロライナの作家James Breeden。だらけたどん底生活を送るカップルの部屋にいつものように現れたダチが放り出してあった新聞を何気なく見ると、彼の買ったロトが大当たりだったのだが…。現代ノワール定番のチープな奴らのチープな末路はいつだって私の好物だよ。
そしてAll Due Respectから4冊の著作のあるカリフォルニア、オークランド在住のRob Pierce。新興ギャングに押される老ボスの配下である主人公が、知り合いの女性を使い敵のトップの首を狙うが…。独特の抑えられたリズムで抑えられた感情が語られ、それがかすれるように終わるエンディング。早くAll Dueの方もちゃんと読まなくては。
続くはフィラデルフィア出身で、前に名前だけ出したけど全然進んでなくてごめんの香港にベースを置くCrime Waveからの著作もあるTony Knighton。上司に注意されながらも身の安全のために拳銃を手放さない駐車場で働く男。だが危険は思いがけない方向からやってくる。そしてそれは時に幸運に見える時も…。読み終わってみるとファム・ファタールばっか重視の連中の言ってるようなタイプのノワール定型のような構造が隠されていたり。いや作品の方の批判じゃないっすよ。
次は英国ペイントンのTom Leins。俺はどんなヤバい仕事でも引き受ける仕事屋だ。今度のは書類の入った箱を届けてくれっていう簡単な仕事だ。だが、俺にもルールってもんがある。そしてその箱の中身は…。若干シンプルだけど、小手先の組み立てよりもキャラクターや動きを重視してる感じは買う。今後に期待っす。
最後はMike Penn。ちょっとこの人だけ出身地わからず。あっちこっちのアンソロジーに作品を出して編集などもやっているそうなのだけど。新居で新しい生活が遅れると思っていたが、夫の留守中変質者の家主に嫌がらせを受け続ける妻の堪忍袋の緒が遂に切れ…。案外ノワールとか以外のミステリ・ファンの人だとこの中で一番読みやすいやつかも。CSIとかで捜査を進めて行くうちに逆向きにこの真相が見えるとかね。

というわけで、ヴァラエティに富んだなかなかに読み応えのあるアンソロジーでした。さすがのCrime Factory。で、こちら最初に最新と紹介したのだけど、実は出たのは昨年10月。前にも17と18の間が1年ぐらい空いたりということもあったのだが、今はホームページの方も閉鎖されていてどうなのかな、という感じ。しかしさあ、これで終わりかどうこうなんて、Issue2から18までの17冊未読で残してる奴の言うことじゃないよね。とにかく奴らはこの号で終わりなどという宣言は一切しておらん!未読のをなるべく早く読みつつ次を期待するですよ。サンキュー、Crime Factory!
あと一つ、これでちょっとオーストラリア方面の動きが見えるかな、と期待していたのだけど、ご覧の通りとりあえずオーストラリア作家は1名という感じで、そこは残念。まあ当初からワールドワイドで活動していたCrime Factoryだからね。で、私同様オーストラリアの動きも気になるという人にお勧めは、AustCrimeFictionというオーストラリア-ニュージーランド圏のミステリのレビューをやってるサイト。ちょっと日本からだと見えにくいネッド・ケリー賞やナイオ・マーシュ賞なんかの情報も詳しくわかります。とりあえずはこちらで選んだ2016年のオーストラリア-ニュージーランド圏ベスト・ミステリTop Books of 2016 on AustCrimeFictionあたりから気になる本を探してみては?そしてハードボイルド好きにおススメは、前にも名前を出したこのCrime Factory一味の一人、オーストラリアの作家Andrew Nette氏がLos Angeles Review of Booksに寄稿した「Empty Beaches: In Search of Australia’s Fictional Private Eyes」というエッセイ。オーストラリアの映画化もされた私立探偵Cliff Hardyシリーズを中心にオーストラリア・ハードボイルド・シーンについて語る大変優れたもので勉強になりました。必読!あとオーストラリア方面ではNetteさんも関わってるらしいオーストラリアの作家のみによる犯罪小説アンソロジー『Crime Scenes』というのが出たそうで、そっちもいずれ読んでみたいと思ってます。更にAndrew Netteさん大ニュース!あの280 Stepsから発行され現在絶版中の『Gunshine State』が遂に来年Down & Out Booksから再版!公開されたばかりのしびれるジャケットを見たい人はすぐにNetteさんのホームページへ!

Andrew NetteホームページPulp Curry

AustCrimeFiction


●Crime Factory





●Crime Scenes



■Switchblade (Issue One Book 1)

最後に登場がコイツ!最近度々プッシュしてまいりましたL. A.発最新犯罪小説アンソロジーSwitchblade第1集であります!いや、最後になっちゃったのだけど、実は読み始めたのはこれが一番早かったり…。前にも書いたのだけどこの第1集、Kindleの普通の活字の本の形式ではなくマンガ/コミックのようにプリント版の1ページがそのまま1ページとして表示されるようになっている。タイミング的にもKindleに採用されたComixologyのシステムを使うつもりだったようだが、実はそれが全く機能していなくて、普通に拡大することもできず、ほぼスマホなどでは読むのが不可能といった状態。いや、アンタこの小さいのが読めるんならそれでいいよ。どうせワシャ老眼なんじゃろ。そんなわけで自宅のみで使っているiPadで帰宅後少ない時間の中で2~3から5ページぐらいずつ読めたり読めなかったりみたいな感じでえらく時間がかかってしまって結局読み終わったのは最後という話なのである。まあ、色々と言いたいことは多いのだが、とにかく内容の方に行きましょう。ではまず収録作品と作家から。

  • Flash Fiction
    • Getting Away With It/Paul D. Brazill
    • Get Wrenching/Jim Wilsky
    • Re-Election/Fred Zackel
    • Primed/Scotch Rutherford
    • Urban Legend#223/Susan Cornford
  • Short Fiction
    • The Stooge/Tom Leins
    • Rats/Liam Sweeny
    • That's Alright Mama/Steve Liskow
    • Taste for Danger/Lawrence kelter
    • The Apex Predator/William Dylan Powell
    • North Creek Brown/Preston Lang
    • Stranger in a Bar/Travis Richardson
    • Killing Time so I Can Dig Myself a Deeper Grave/Jack Bates

まず申し訳ないのだが、Flash Fictionについては今回は省略させてもらいます。いや短いからどうでもよいというものではないのだが、さすがに今回長くなりすぎてて余力がない…。やっぱ5つは多すぎたか…。まあ毎度のことながら計画性と見通しの雑な奴のやることってこうなるのだよね。反省します。ちなみにトップを切るのは言わずと知れたBrazill大将。確か大将からの情報でこれを知って、他に情報なかったので、最初はてっきり英国発と思い込んでそう書いてしまったのだよね。Scotch RutherfordはこのSwitchbladeの首謀者。かの必読アンソロジー『All Due Respect』にも参加してる人です。
Short FictionトップはCrime Factoryの方にも登場のTom Leins。犯罪組織に潜り込んでいたアンダーカバーの焦燥が行き止まりで暴発する!読んでた時は気付かなかったのだけど、今回やっとCrime Factoryのと同じ人と気付いて照らし合わせてみると、作者の方向性が見える感じ。粗削りにも見えるが、小手先の話のまとまりにこだわらずこのまま突っ走ってもらいたい。英国期待の星!
続いてニューヨーク在住のLiam Sweeny。ホームレスになってしまった男と彼にホームレス指南をする友人との話。犯罪要素は無かったり。ホームレスといわゆる普通の生活の段差みたいなものを見る主人公の心の動きが切々と描かれる。ホームレスになり切れない、みたいな表現が頭に浮かんだけど、ホームレスになり切れる人なんて本当にいるのだろうか。結構心に残る作品。長編、短編集が1冊ずつあり、長編『Welcome Back, Jack』はケン・ブルーウン、Joe Cliffordなどからも高く評価されているのでいずれ読んでみるつもり。
次はコネチカット州在住の作家Steve Liskow。かつてはジャズ・ギタリストとして鳴らしたが、現在は金持ちの息子にうんざりしながらギターのレッスンをつける男。だが、彼の目的はそれだけではない…。まあ予想通りの展開と言ってしまえばそれまでなのだけど、ミュージシャン的な独特の物の見方は面白かったり。受賞・ノミネート歴も多数ありハードボイルド方面らしき著作も結構ある。こーゆー人に気付かん辺りは私もまだまだ甘い。
ニューヨーク、ブルックリンのLawrence kelter。Down & Outからの著作もあり名前は知ってたのだけど、今調べたらなんだよ、結構ベストセラーぐらいの人気作家じゃん。ってことでちょっと悩んでたのだけどここでは容赦なく行く。この作品主人公の視点からあるパーティー会場での地域を仕切るならず者二人組の傍若無人ぶりが前半延々と書かれるのだけど、そこが長すぎてちょっとバランスが悪い。主人公が何者かが見えるあたりからがポイントなのだと思うので、敢えてあらすじは書かない。Down & Outからのといっぱいある女性刑事ものらしきのとかのどれかとか読んで話はそれからだ!どーすっかな、この場合とりあえず100円とかになってるのを適当にひっつかんで読んでみるかな。とっかかりと時間さえあればこの手のどんどん読んでみたいんっすよね。Lawrence kelterでアマゾン検索してみるべし!
次はテキサスのWilliam Dylan Powell。警察からの委託で川に沈んだ犯罪に関わる車の引き揚げのダイバーを仕事とする主人公は、車中に大金を見つけるが…。設定も話の流れも面白いと思ったのだけど、落ちがひねりすぎて逆にひねらなすぎのものになってしまったようにも見えるのだけど。結構ユーモアみたいなのも作風にしているようなので、これも持ち味なのかも。第2集にも登場しているのでまた読んで考えてみます。
続いてまたもニューヨークからのPreston Lang。All Due Respect、Crime Waveからの長編と短編集1冊あり。父からの仕事を引き継ぎ塗料屋の店を営むアラブ系の男。父の代からの地元のギャングが今月もみかじめ料を受け取りに現れる。「来月は別の男が来る。そいつをぶちのめしたら当分月の払いは優遇してやるぜ。」ギャングの言葉をどう受け取ればいいかわからない男だったが、翌月その通り初めて見る男が現れる…。背景に色々なものを含む重層的な話を独特の目線で短編にまとめるなかなかの腕前。
次のTravis RichardsonはL. A.から。バーにはいつもの面子の酔っ払いたちに最近来るようになった新顔が一人。そこにいかにもトラブルを引き起こしそうなバカップルが現れるが…。日常的な風景から二転三転するバイオレンスなストーリー。結構受賞・ノミネート歴もあるようだけど、少し休業して最近復帰したようにも見える。第2中編『Keeping The Record』のカバーはさっき見てモロに私のツボにはまった。ぜひ読んでみたい。とにかくアマゾンで見てみるべし!
最後はデトロイト在住の作家Jack Bates。短編小説での活躍は長く、それほどまとまった本はないのだけど、受賞・ノミネート歴も多い人。ギャングからの借金もギャンブルで使い果たし、もはや後のない男の前に現れた大金を持った老人は、起死回生のチャンスなのか?定番の犯罪小説ネタのようだが、何か夢の断片のような歪んで手掛かりの乏しいような奇妙な風味が全編に付きまとう作品。

例えばミステリの短編というのを体操の競技のようにきれいに着地が決まるのが正しいように考える人もいるが、ジャッカスのバカ川飛び込み大会みたいにどんだけ無様に痛く着水したかの方が点が高かったりというのの方が好きな人だっているわけで、はたまたスピードも順位も関係なくどんな面でゴールに駆け込んだかだけに意味がある陸上競技だって考えられる。つまりこのアンソロジーは後者のような方向のものなのだ。読んでるときはやたら粗削りな感じがしてたけど、調べてみると結構錚々たるメンバーだったり。技量不足ではなくそちらの方向に刃を研いできた作家も多いのだろう。まさに名前とカバーの見た目通りの「悪い」本を堪能させてもらったよ。まだまだ知らないいい作家は沢山いるね。また読みたい本も増えたっすよ。このどちらのアンソロジーも苦戦している時期、今年4月にL. A.より立ち上がったこの『Switchblade』。勢いは止まず、今月早くも第3集を刊行し、初のライブイベントも開催されたとのこと。えーとナイフをぶん回したりする流血沙汰ではなく多分朗読会だろう。この勢いで更に突っ走ってくれることを期待しています。だがしかし…。最初にも言ったこの仕様は本当に読みづらかった…。時間がかかりすぎて読み間違えたところもあったのではと心配になったり。前にも言ったけど装丁にもこだわりプリント版の本の形のまま読ませたいという心意気は買うので、せめてちゃんと拡大できるようにだけはして欲しい。次はちゃんとなってるよね?また絶対読むからさあ。頼むよ!

Switchblade


●Switchblade



というわけでやっと終わりなんだけど、ついでに最後にもう一つおススメ!発売したばかりのこちらのアンソロジー『The Blood Red Experiment (Series Book 1)』。今回アンソロジーに参加している色々な作家を軽く調べる時、まずアマゾンで検索してみるのが便利だったりするのでそれぞれやってみていたところ、やたら引っかかってくるのがこれ。で、気になって調べてみたところ、まずこちら編集がCraig Douglas。ちょっとよくわからないのだけどNear To The Knuckleの本であちこちで編集としてクレジットされているので、多分そこの人だろう。登場するのも今回紹介のを含むノワールの強者面々。そして更に何が注目かというと、こちらのプリント・レプリカKindle版なる表示。しかし、こちらは実は過去にプリント版で出たものというわけではない。紹介文によると、これはイタリアのGialloというジャンルのものを目指したもの。その説明によるとGialloというのは粗悪な紙に印刷された犯罪小説などの掲載されたイタリア版パルプかもっと悪い本らしい。あっ、Jason Michelの名前もあると思ってたら、よく見たら編集だ!さてはアンタが密輸してきたんか?奴らが何を始めたかというと、つまり見かけまで悪く作り上げた悪い本をKindleで出してやるぜ、ということなのである。プリント・レプリカ版と銘打たれてはいても、実はプリントのオリジナル版などないのである。ご理解いただけましたでしょうか?これはつまり今回の『Switchblade』とも共通する発想(あちらはプリント版もあるが)。もしかしたらどこかにこいつらのお手本になったスゲーのがあるのではないかと思うが、今のところ不明。しかし今後も一部の悪者共の間になるべく粗悪で汚い悪い本を作ってやるぜ、という動きは高まって行くものと予想される。わーベーシック・チャンネルとか思い起こされるなあ、とか言ってもあんまりよくわかんないだろうけど説明する余力なし…。テクノ。詳細についてはいずれまた!とにかくこのブームに乗った!と思う人はまず手に取るべし!…とは言ってみたもののちゃんとこれ拡大ぐらいできるんだろうな…。頼むよ!あっ、拡大できるじゃん。わー、スゲーかっけー!読むべし!

いやはや…、今回はにゃんか途方もなく長くなってしまったよ。思いついてじゃあれ読もー、これもー、そんなにやれるわけないじゃん!5つぐらいに絞れよ!とやってみた結果がこの始末…。アマゾンのリンクも最初のNear To The Knuckle並べたあたりでこれはまずいかも、ってちょっと思ったけど、えーい、ワシはこんなに面白そうなのがいっぱい出てるんだよー、って見せたいんじゃ!とゴリ押し。画像もでかいのゴリ押しで…。なんだか読み込みがすごい遅くなったりして迷惑してる人がいたらごめん…。でも今回はちょっと個人的にはプチ達成感あるっすよ。やっぱりこういうのをやらなくてはね。別に誰もまだ注目してない実力作家をいち早く見つけるみたいなダサい目的じゃなくてさ、おらあっ!出したぞ!読んでみやがれっ!って感じのをよっしゃあっ!って読むのは変人読書バカの快感じゃあないすか。別に誰も同意してくれなくたっていいよっ!まあここからはまたどーしてもこれはやらなきゃ、の有名どころが少し続いたり、Down & OutやPolisの活きのいいとこどんどん読まなくちゃ、とか早急に読まねばならんあれとあれとかあるけどさ、でもまたこーゆーの必ずやるよ!近日中に!えと…、次は3冊ぐらいで…。今回最後に『The Blood Red Experiment』なんて楽しみなの見つけたし、『Switchblade』はちゃんと追って行きたいし、あーそうだ!通りすがりに『Crime Syndicate Magazine』の第3集出てたの見つけちまったよ。今度こそは必ず読むからねー、ごめーん。あとAlec Cizakさんのリニューアルした『Pulp Modern』もあるし、早く『Crime Scenes』読んでオーストラリアへのとっかかり掴みたいしなあ、って既に3冊越えてるじゃん!バカじゃん!いや、とにかく頑張るっす。苦労して読んでくれた人いたらありがとさんでした。


【その他おしらせの類】
いや、もうずいぶん長くなってるし、余力もないのだが、どうしても伝えねばならんことがいくつかあるので少し手短に。
まずはあのAll Due RespectがDown & Out傘下に。ちょっとここんところ元気がなくなりリリースも少なく、そろそろ終わってしまうのでは、と心配していたAll Due Respectだったのだが、随分色々と遅れてていまいち曖昧になっちゃってるのだけど、確か9月にDown & Out傘下に入ることが発表された。自分が見たのはAll Dueのサイトから(All Due Respect : Down & Out Books Acquires All Due Respect)。Chris Rhatigan氏によると、相棒Mike Monsonが共同経営から降り、以来一人での運営は難しくなり、今回の決定に至ったとのこと。いやさ、ここで毎回毎回何回Down & Outって言ってるか知れないぐらいに肩入れしてるDown & Outだしさ、それに大きいものに独立系が呑まれたような構図に不満を感じてるとかいうことでもない。しかしAll Due Respectをウェブジンから立ち上げ、ここまで独立独歩で頑張り、犯罪小説ジャンルに一石を投じてきたRhatigan氏の心中を思うとここはこのくらいのテンションで語るしかない。Monsonさんも辛いところだったのだろうね。本当にこのジャンルを愛している人だったもの。とりあえず今までのAll DueタイトルはすべてDown & Outから再リリースされるということ。同傘下のShotgun Honeyもそのポジションで息を吹き返し、独自のリリースを続けているところでもあるし、またAll Due Respectもそこで新たにエッジのきいた作品群を世に出し続けてくれることには心配はないだろう。新たなAll Due Respectの再開は2018年からということ。まあここで私がちょいと遅れてしんみりしているところで、精力的なRhatigan氏はもう次に向けて大忙しになっていることでしょう。頑張れAll Due Respect!私はいつでもAll Dueの信奉者だよっ!
(追記:とか言ってたら本日12月にAll Dueの新刊Matt Phillipsの『ACCIDENTAL OUTLAWS』が発行されることが発表されました!さすがRhatiganさん!)

で、そのDown & OutからやっとAnthony Neil Smith先生の旧作が一挙にリリース!あのBilly Lafitteから永らく入手困難だったRed Hammond名義の『XXX Shamus』まで!いや、こっちも対応が遅れててすんません…。これ終わったらすぐに前の『Baddest Ass』のところ更新しますので…。えっと、明日…。

最後に、今回Todd Morr、Andrew Nette両氏の再版について文中でお知らせしたが、まだまだあるぞ280 Steps復刊情報!前にShotgun HoneyからRusty Barnesの新刊が出るよー、とお伝えしたと思うのだが、そろそろ出た頃やなと思って先日アマゾンに見に行ったらなんと!新作『Knuckledragger』に加え、280 Stepsより発行されていた『Ridgerunner』も同Shotgun Honeyより復刊されているではないか!以前にも書いたがこれについては280 Steps版を既に読んでいて、復刊された暁にはとも書いたので、近日中には必ず書くであります。しかしこれこのShotgun Honey版でも「Killer from the Hills Book 1」となってるんだけど、あのラストでホントに続きあるんだろうか?とりあえず『Knuckledragger』は続きじゃないようだけど。いや、語るべき本が復刊されて本当にうれしいよ。そして更に!そういやEryk PruittもPolisから新作出るって話だったよな、とチェックしに行ったら、こちらもなんと!新作『What We Reckon』にプラス、こちらもPolisから280 Stepsからのあの『Dirtbags』と『Hashtag』が復刊されてるではないか!あっEryk Pruittについて書くのは初めてだったか。280 Stepsもまだ初期に近いころ『Dirtbags』で長編デビューを果たし、それが一部でかなり話題となり、Eric Beetnerの『Leadfoot』などとともに世に280 Stepsの名を知らしめた立役者の一人なのである。私もその辺で280 Stepsというのを知ったのだったり。いや、あれが復刊されて本当に良かったよ。このまま終わるはずはないと思ってたけど。つーか私も早くその辺ぐらいちゃんと読まねば…。Eric Beetnerさんの名前も出たところだが、やはり『Leadfoot』などのMcGrawシリーズに続き、280 Stepsでは予約受付まで始まっていたのに第3部が日の目を見ずに終わってしまっていたあのLars and Shaineシリーズ3部作が来年2月にDown & Outから発行されるそうです。良かったね。そして更に!あの280 Steps作品救出作戦を進める英fahrenheitからはSeth Lynchの『The Paris Ripper』も復刊!Seth Lynchさんは新作『A Citizen Of Nowhere』もfahrenheitから出版!いやあ280 Stepsの突然ぐらいに近い終結には本当にがっくりさせられたが、意外と早くかなりの作品が復刊されているのは本当に喜ばしいことです。やっぱり奴らは出すべき本を出していたのだな、と再確認。それにしても、再販されたものはどれも文句のつけようのない格好いいカバーで出てくるのだけど、それらとも違う異彩を放つ280 Stepsのアートワークは本当に素晴らしかったな、などと思い出していて、いや、あれがこのまま失われてしまうのはあまりにも惜しいと思い立ち、まだわずかに残っているプリント版のカバー画像をアマゾン他からかき集め、カバーギャラリーを作成しました。うわ、小っちゃ。まあこーなると思ったけど…。元は1600x1280pxあるのでなんか拡大したりして見て下さい。あー、結局連休直前まで引っ張っちまったよ。今週なんかずいぶん頑張ったのだが…。とりあえず私もここまでです。あとは寝てまた明日からボチボチ頑張るです。ぐー。



●Rusty Barnes



●Eryk Pruitt



●Seth Lynch



●これも読むべし!



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