というわけで2000AD 2017年冬期後編であります。とにかく早く進めなければ。そして後編のトップ画像はやはりこちら『Kingdom』!いつも面白いのにやっとトップ画像にできたよ。Dan Abnettさん、ごめんね。というわけで、行の高さとかそろえるの面倒なので、今回は順番を変えて、この『Kingdom』から始めます。
Kingdom : As It Is In Heaven
Dan Abnett/Richard Elson
凶暴化した巨大昆虫が闊歩し、人類が住めなくなった未来の地球で、荒廃した地に取り残され闘い続ける、犬から遺伝子改造された戦士Gene the Hackman達の物語である人気シリーズ。しばらくの中断の後、2014年秋期に再開し、昨年冬期に続き、今年も冬期の登場となったこちらのシリーズ、昨年冬期の再開第2シーズンで、新シリーズの方向が遂に見えてきたところ。再開第1シーズンでは少し時間をさか戻り、Gene the Hackman達がリーダーを持ち群れで行動する進化した巨大昆虫たちと遭遇するエピソードを描き、第2シーズンでは現在に戻り、その群れにより”王国”が危機にさらされるという展開になったわけです。そしてその闘いの最中、Geneたちは現在は軌道上の衛星に暮らす人類の生き残りNuman達が地上の調査に来ているところに遭遇します。GeneとNumanはシリーズの以前の話の中でも会ったことがあるようです。そして巨大昆虫の巣の中で危機に陥りますが、人間たちのシャトルで脱出。その過程でGeneは人間たちが遺伝子操作によるダニの媒介で昆虫たちを急激に進化させたことにより群れでの行動が起こったことを知ります。群れ同士の争いや、進化因子の中に仕込まれたトリガーにより長期的には巨大昆虫たちは絶滅に向かうことになっていますが、そのさなかで到底Gene達の"王国"は生き残ることができない。怒りに燃えるGene達を人間の護衛に同行していたGene達同様に犬から改造された戦士Canisが制圧、そしてシャトルは衛星に向かう…。というところで今期再開第3シーズンへと続きます。
Geneは荒野で愛する妻子や仲間とともに平和に暮らしていた。だが、どこからか彼を呼ぶ声がする。そして荒野から小さな人影が近づいてくる。それはかつてGeneが出会った人間の少女Leezee Sower。そして、Geneは軌道上の衛星の中で目覚める…。
衛星へと連れてこられた後、Gene達は機械につながれ眠らされ、平和な夢を見せられ続けていた。その間、人間たちの間ではGeneの扱いについて議論が交わされ、結果遂に彼らはこのまま殺されることが決定された。しかし、かつてGeneに地上で助けられ、その後衛星上で成長したLeezee Sowerは、Geneを見捨てることができず、密かに彼を目覚めさせる。既に衛星に拘束され続けてから半年もの時間が過ぎていた。地上の”王国”は、そして愛する妻子は無事なのか?一刻も早く戻らなければならない。そして脱出を目指すGeneと”主人”たちとの闘いが始まり、その中で彼は新たに遺伝子改造で産み出されたが、失敗作とされ、その後逃亡し衛星内に隠れゲリラ的に人間たちに攻撃を仕掛けていた豹人間Pauseと出会う…。
見た目豹っぽいので豹人間とか書いちゃったけど、もしかしたら猫人間かも。どちらにしてもキュート要素一切なし。Leezee Sowerについてももう少し色々あるようなのだけど、今回はこれで勘弁してください。なかなか過去シリーズまで手が回らないのだけど、好きなシリーズなので調べてわかっちゃうのももったいない気がする。今回は保留っつーことで。果たしてGeneは無事に衛星を脱出し、地上を救えるのか?次回はまた来年冬か?なんか散々遅れてるのでもーそっちの方が近くなっちゃってるし…。
毎度職人芸で楽しませてくれるDan Abnett。多数の代表作がある人ですが、注目は昨年I. N. J. Culbardとのコンビで始まった『Brink』。実はこの『Kingdom』と『Brink』、地上に住めなくなった人類が軌道上で生き延びているという設定が共通していて、おそらく『Brink』はこの『Kingdom』の設定を発展させたところから始まったのではないかと思われます。ってお前気付くのが遅いよっ。こちらの『Kingdom』では急場しのぎの衛星で、ごくわずかの人間が管理作戦行動を行い、他の多くの人間は冷凍冬眠され再び地上に戻れる日を待っているというのに対し、『Brink』では軌道上にいくつもの巨大な都市のような衛星を構築して暮らしています。さすがAbnett、なかなかに面白い発展をさせるなと思います。アイデアの使いまわしとか野暮な知ったかぶりは言うなかれ。
このシリーズの作画ももうお馴染みのRichard Elson。以前から、構図の取り方だったり表現などで日本のマンガと共通するところが多いと書いてきたのですが、それゆえに違いというのも少し見えてきて興味深かったり。Elsonの画をそのまま日本のマンガに持ってくると、おそらくは基本となる線が若干太すぎる印象になると思う。で、日本でももっと太い線を使う人はたくさんいるけど、それに比べると線の強弱は少ない。何が言いたいかというと、つまりこれってカラー前提の画と白黒前提の画の違いということなんだろうということ。以前にも現代のCGでのカラーリングは線の印象が弱くなるというのを書いたけど、それに合わせてElsonの画では根本的に少し太めの線が選択されているのだと思う。言い換えれば、まあ多分だけど、もしElsonが日本の状況で画を描いていたらもう少し細い線を使っていたのではないかなということ。もちろん線というのは個人の感覚で選択されるのだけど、その環境によっても若干差異が出るのかもしれないというようなことを思うわけです。画というのはそれぞれの個性なので、平均化してくらべるというのは本当に難しいし、大抵は強引なこじつけになっちまうのだけど、ちょっと日本のものに近いようにも思われる技法を使うElsonだけに少しその辺が見えるように思います。ただまた一方で「日本のマンガ」といった時に、ゲームやラノベイラスト方面にも広く広がる美少女ジャンル(これ正確なジャンル名とかないのか?)については含まれていなかったりもします。あれはまたかなり細い線を使った上でのカラー前提というような全く別方向の進化をしているもので、何とかその先鋭的なところだけでもちゃんとチェックしておかなければと思うのだけど、こっちも書店で美少女物を一生懸命チェックするには恥ずかしい年齢風貌になっちまってるしなあ。そもそもそっちまでチェックするには時間が足りないよ。なんかあんまり時間がなくて、その反動でもー1か月ぐらいみんな休んでただ映画とかだけ観て暮らそうかと思ったりするけど、最近のこのブログも半分お休みぐらいのスローペースになっちゃってるしなあ…、と何故かいつの間にか個人的な愚痴になってるよ…。あ、ちなみにこれはRichard Elson氏の画に対する批判とかでは一切ないです。Elsonさんの画はいつも迫力があって見やすくて大好きです。
Hope : ...For the Future
Guy Adams/Jimmy Broxton
2014年冬期にグラント・モリソンの人気キャラを復活させた『Ulysses Sweet』で登場し、翌年も頑張るも、あんまりパッとしなかったイギリスの有名な作家/俳優Guy Adamsによる久々の新シリーズ。オカルトに深く関わり魔術も使える私立探偵が主人公のハードボイルドです。
また別の歴史の1940年代のハリウッド。第2次大戦は終結したが、連合国の勝利にはオカルトが深く関わっていた。主人公Mallory HOPEもその世界では魔術を操れるものの一人。だが、その使用には必ず代価が付きまとう…。そして彼はその一方で日々の糧を私立探偵稼業で賄っていた。今回彼が依頼されたのはハリウッドの有名な子役スターの少年の失踪事件。これは誘拐なのか?自発的な意思による失踪なのか?捜査が進むにつれ浮かび上がってくる富裕な家庭内の秘密。そして更に彼がかつて戦場で出会った黒い力の片鱗が姿を現して来る…。
実は「別の歴史の…」というあたりの設定は、これを書くために作品紹介のあらすじを読んでいて初めて知った。魔術を使える私立探偵というのはわかって読んでたけど、別の歴史というところまではわかっていなかったり。ちょっとわかりにくいのは、これがハードボイルドの定型に沿った一人称の語りで書かれていて、主人公個人の視点で語られているとそれがそういう世界に深く関わる主人公ゆえの裏の世界の知識なのか、社会公式のものなのかが見えにくくてその辺があまりきちんと整理されてなかったりという事情があるのですよね。この作品の世間的評価については、ちょっと現在のところ不明。お便りコーナーでも言及がなかったり。個人的な意見を言えば、この作品、まずはハードボイルド・コミックという点ではかなりの出来だと思う。ちょっとこのコンビがどのあたりをお手本にしたかそれほど具体的には指摘できないのだけど、多くは70年代ぐらいまでの良質なハードボイルド映画の雰囲気をうまく作り出している。カメラそのものが観察する視点のような静的なフレームの中で動きが起こるような感じとか。白黒のJimmy Broxtonの画はオカルトの幻想的なものが入り込んでくるところもも含めて本当に素晴らしいのだけど、それぞれの場面を選択するのはライターの仕事でもあるのでやはりこのコンビによって達成されたものというべきでしょう。しかしハードボイルドのスタイルを使ったコミックでよくみられる手法で、難しいなあと思うのは、本家小説からの手法に倣い一人称のモノローグが多用されることです。まず小説で一人称の場合はあらゆる情報の入力が主人公の語りのみになるのだけど、映像やコミックの場合は既にカメラの視点で3人称になってるのでその意味が薄れる。でもこれは常に主人公を中心とした場面のみを使って物語を進めて行くということで、かなり一人称に近い形が作られるもので、実際小説でも3人称で書かれているけどその方法で一人称に近い形の物語を作るスタイルもよく見られる。で、そこに所々に一人称のモノローグを乗せて行くわけだけど、映画なら音声なのでそれほど邪魔になるものではないのだけど、コミックだと画面の中で物理的に場所を占めてしまう。また一方で雰囲気のある語りを作ろうとすると、どうしても通常のコミックのモノローグより長くなってしまう。セリフを常に音声として考えている人が戸惑うぐらいコミック/マンガには文字情報が入らないものなのだよね。この作品に関してはGuy Adamsはその辺のところを承知した上でこの手法を使ってるとは思うし、時々他のジャンルから来た人が初めてライターをやった時などに見られる整理されていない文字情報があふれてるような感じはないのだけど、やはりどうしても読み難いものとなってしまう印象がある。実際この作品、やはり小説よりは情報をいれられないコミックという形でこの手法に情報を集中しちゃったことで前述のものを含めたわかりにくさがあるんじゃないかなと思うのですよね。まあとにかくは個人的には結構期待の作品。今期は全6回でしたが、夏期後半に再登場しています。そちらが物語後半でそこで区切りが付くらしい。実は読む方も少し遅れていてまだそこまで届いていなかったりするのですが…。前半少し話の展開がスローだった感じもあるのですが、まあとりあえずそこまで読んでから改めて全体の感想について語ろうと思います。しかし夏期いつになったら書けるのやら…。
で、作画Jimmy Broxtonについてなのですが、なかなかにすごい画なのだけど知らなかったアーティストなので、ちょっと調べてみたら意外な発見が。実はこのAdams/Broxtonコンビ、2000AD以前にも一緒に作品を作っている。それがこちらの『Goldtiger』。こちら2013年にKickstaterを使って個人出版されたものだそうです。内容は60年代風のセックス&バイオレンスのクライムアクションということらしい。多分イギリスのコミック・ファンあたりではかなり注目されたプロジェクトなんだろうね。いや、ホントにまだ知らないことばかりで、手探りで頑張って行かねばと思うばかりです。Broxtonの方はそれ以前にもDCの仕事などもあったようだが、Adamaの方は『Ulysses Sweet』が始まったころにコミックに取り組む意気込みみたいなインタビューを見つけて読んでいたりしたのでその辺が始まりだろうと思ってたけど、もう少し前からそっちで頑張っていたのだね。調査不足で申し訳ない。ちなみにこちらの作品現在は2000AD/Rebellionから発売中です。2000ADのアプリショップでも販売されていて、実はちょっと前のセールでよくわからないまま面白そうなんで買っておいたのだが、いまだに手を付けていなかったりという次第だったりします。まあ2000ADのグラフィックノベル方面も巨匠Pat Mills作品中心にあっちこっち手を付けてまだどれも全然読み終わっていないという状態なのだが、夏期のこの『HOPE』の後半戦までにはもう少し見当がつくようにしておきますですよ。で、このコンビなのだが、その後もMadefireのモーションコミック『The Engine』を共作し、遂に今回2000ADにコンビで登場となったということなのでした。ホントにいつもいい加減にやってるわけではないのだが、どうしても一度に入れられる情報量には限度があるので、なんか後々謝りながら少しずつ知識を積み重ねて行くしかないのですよね。ずいぶん重要な情報が後出しになってしまって、Guy Adamsさん、すみませんでした。
Sinister Dexter
Dan Abnett/Steve Yeowell
1. One Hit Wonder
2. Electric Landlady (Part1-2)
3. A Rocky Start
4. Better The Devil
さて、今年もおなじみAbnettの『Sinister Dexter』が帰って参りました!って良く調べたらレギュラー・シリーズは2015年秋以来なのか。まあ昨年はワンショットが3本あったからね。毎回アーティストが交代する今回の作画は、ベテランSteve Yeowell。
もはやおなじみの二人組ガンシャークのシリーズなのだが、まだ読み始めて日が浅くよくわからんという人のために最近までの経緯を少し説明すると、ギャングの大ボスTanenbaumを暗殺したSinisterとDexterだったが、その後別次元の並行世界から逃亡してきた同一人物がすり替わり、そのボスの座に収まっていることを知る。そんな存在がいては世界のバランスが崩れこの世界自体が崩壊する危険性がある。そんなわけで証人保護プログラムに守られたTanenbaumの居所を探し求め、遂に突き止めて再び彼に銃弾を放つが、その瞬間Tnenbaumの身体が大爆発。その爆発に巻き込まれた二人は、今度は自分たちが別の並行世界に飛ばされてしまう。そこはSinisterとDexterが存在していなかった世界。誰も自分たちのことを知らない世界の同じ町で、彼らはまた、ガンシャーク稼業を始めるのだった。という成り行きで、そろそろこの二人も新しい環境に慣れ始めてきたところ。
1. 依頼仕事で大金持ちのターゲットを襲うSinister Dexter。配下を皆殺しにして、ターゲットを追い詰めたが、屋敷の奥の難攻不落のシェルターに立て籠もられてしまう。もう追うのが面倒になった二人は屋敷にミキサー車を乗り入れ、シェルターの入り口をコンクリート詰めに…。
2. 高性能重武装の女性型アンドロイドが管理人を務める高級アパートに居を構えたSinister Dexter。これでねぐらのセキュリティは安泰だと思った二人だったが、常に大量の銃火器をストックしている二人の部屋こそが危険地帯だと認識されてしまい…。この作品はまずこのタイトルの駄洒落からから思いついたと推測。Abnettもジミヘン好きなんだろうね。青春時代の愛聴盤を見つけ、これだ!という感じで作った話なんじゃないかと思うが?
3. 俺の経営するバーに最近現れるようになった奇妙な二人組。新参者なのだがまるで昔馴染みのようにふるまう。どうやらまともな稼業ではないらしいが、店で揉め事が起こると軽く片付けてくれる。奴らの名前はSinisterとDexter…。元の世界ではなじみだったバーNoneの経営者Rockeyの視点から語られるSinister Dexter。
4. 依頼仕事でギャングのボスを暗殺に向かった二人。だがその屋敷についてみると、すでに仕事は片付けられ、現場に一人の奇妙な男がいた。先を越しちまって悪かったな。あんたらSinisterとDexterだろう。俺はDevilって名で通ってる。そしてにこやかに現場を去る男。その後二人の元には仕事の報酬も送られてきたのだが…。新キャラ登場。おそらくはこのDevilが次の展開に深く関わってくることになるのでしょう。というところで今回はここまで。今回は冬期に登場ということで、もしかしたら年内に再登場もあるかもね。新展開に大いに期待です。
作画のSteve Yeowellはかつてグラント・モリソンの英国時代の代表作『Zenith』を描いていた人で、最近の2000ADではアラン・ムーアの娘夫妻の『Black Shuck』があります。少し前に書いたことなんだけど、グラント・モリソンの『Invisible』についての研究本『Our Sentence is Up』を手に入れて、ちょっと中断してたりもした『Invisible』を最初から読み直したりもしているのですが、その一番最初のパートを描いていたのがこのSteve Yeowell。で、その頃の画と比べると、決して画力などは落ちていることはないのだけど、昔は細い線を重ねてたりしたところをベタにしちゃったりという変化があって、昔に比べるとシャープ感が薄れたような印象はある。線についての考え方は人それぞれで変わるものだろうけど、自分は昔の方が好きだったかな、という感じです。経年による画の変化というのはCarlos Ezquerra師匠の恐るべき毒が発酵しもはや解析不能の謎テイストに変化したというようなものが望ましいですね。
40th Anniversary Prog
なんだか2回に分けたのに後編も随分長くなっちまってるのだが、ここでやっと40周年記念号です。今回は2月22日に増刊として発売されました。アプリショップの方では[Specials]のところにあります。カバーを描くのはCarlos Ezquerra師匠!デジタル版ではDavid Ajaの別バージョンも収録。ではとにかく頭から順番にもうひと頑張りであります。
Judge Dredd : Blood
John Wagner/Carl Critchlow
この40周年記念号では2000号記念号と同様に各作品の前に1ページの別作家によるイントロがあります。2000号では1ページのイラスト的なものでしたが、今回はコマ/パネルを割ったものです。そしてまずDreddのイントロを描くのはあのJock!40周年記念パーティーで浮かれる『Judge Dredd』のキャラクターの面々。WalterのみならずDeathまでも。そこにおっかないドレッドが…。「何の騒ぎだ?聞いておらんぞ!2000AD?あれは前世紀に発行禁止になったものだぞ!」そして…。
そして本編。ドレッドは路地で大量の血だまりを見つけ、調査させる。DNAからその血だまりを残した者の身元が分かり、更に調査を進めるとその人物がある大物ギャングの隠し子だったことが判明する。背後で何らかの事件が動いていると察知したドレッドだったが…。
ダークで少し陰鬱な感じの押さえたトーンで語られるミステリー仕立てのストーリー。この40周年記念号では巻末にそれぞれ1ページのキャラクター紹介とライターへのインタビューを掲載された特集ページが設けられています。インタビューでのJohn Wagnerによると、40周年記念ということで自分はDreddでどんなものを書いてきただろうと考え、思いついた言葉が「血」だったということからできたストーリーとのこと。今回のストーリーがミステリ的だったことから、好きなそのジャンルの作品は?と問われて、小説作品ではなくあえてかのフランク・ミラーの『バットマン:イヤー・ワン』を挙げてるところはさすが。
作画のCarl Critchlowはイギリスの有名なイラストレーター/コミック・アーティストでコミック作品を手掛けるのは久しぶりと思われる。くわーっ!またしても知らなかったレジェンドが!とにかく素晴らしいものを見せてもらったの一言に尽きます。ああ、まだ読まねばならぬものはいくらでもあるぞ。
Zombo : Z. O. M. B. O.
Al Ewing/Henry Flint
えーと…、こちらのイントロページはちょっと元ネタが分かりませんでした…。なんか年老いたかつての有名キャラがインタビューを受けているみたいなところのようなのだけど…。いつか分かる日も来るかと思いますが、とりあえずのところは保留ということで…。すみません。こちらを描くのはRufus Dayglo。ピーター・ミリガンと組んで『Bad Company』を復活させたり、昨年はミリガンとの『Counterfeit Girl』を描いたりと2000ADでもお馴染みになってきました。
そして!遂にあの『Zombo』が帰って参りました!このブログも『Zombo』から始まってるんだしさあ、ちゃんと続いてくんないと困るんだよ、ホントに。話は40周年記念パーティーのTharg閣下の語りから始まる。「地球人よ、40周年記念の祝祭の最中に我輩から一言だ。これは宇宙最強コミックの40周年記念であると同時に、実はZomboの40周年記念でもあるのだ。」閣下によると、実は2000ADの創刊に先立ち、AD2000なる雑誌が密かに発行されており、既にZomboは1977年にそちらで始まっていたとのこと。「だが、AD2000はスリルパワーが強力過ぎてひ弱な地球人の脳は持ちこたえられない。しかし、心配するな!この新型40スリルビューワーを通せば地球人でもこのProgを見ることが可能になるのだ!」というわけで1977年、白黒の『Zombo』の始まりでーす。イギリス秘密諜報部。今日Rubyは新たなパートナーに紹介されることになっていた。だがなんだ?この匂いは?腐った肉?その時!壁をぶち破ってその匂いの元となる醜怪なモンスターが現れる。Can I Eat You?これが今日から君の相棒となる現代科学の成果の結晶、Zombie-Human Originated By Macro-Power Bio-Puncturation、Z. O. M. B. O.だ!だが紹介もままならぬうちに、諜報部本部に侵入した敵が襲い掛かる。銃弾をものともせず、その強靭なパワーで敵の身体を引き裂いて行くZ. O. M. B. O.!しかし!これが見えないか、イギリスのクズ共!お前ら全員道連れだ!そう言い放つ男の胸には核爆弾が!そしてそのスイッチが押され、秒読みが始まる!ロンドンはあと10秒の命?続く!…あれ?時間が止まったぞ?どういうことだ?そして周囲の空間が歪み、そこからブリーフ一丁の男が現れる!あの男だ!かの女マッド・サイエンティストに騙され、出張ストリップに呼ばれたまま脳をバックアップ用にZomboの尻に移植されてしまった男性ストリッパーHarry Angel!だが俺のことはZombo Primeと呼んでくれ!そして俺は現在危機に瀕している多元宇宙を救うため、すべてのZomboを召喚しに来た!…うぬぬ!どうしたことだ?新型ビューワーがオーバーヒートし制御不能に!貴様ら地球人に見せられるのはここまでだ!さもなくば命を落とすぞ!あっ…あんまり楽しくてつい最後まで書いちまったよ。
そしてこちらの巻末インタビューでは、Al Ewing、Henry Flint両名がコンビで登場!Zombo登場はずいぶん久しぶりだけど、との問いに答えてAlさん曰く。実は『Zombo』って書くたびにハードル上げすぎちゃってもう次の展開が思いつかなくなっちゃってたんだよね…とのこと。しかし!今回のワンショットで次の展開がちょっと見えてきたとのこと!Zombo再開の日も近し!頑張ってよね。
Ro-Busters : Seeing Red
Pat Mills/Clint Langley
こちらのイントロページは、ABC WarriorsのHammersteinとMek-Quakeの漫才。これまでの2000ADの歴史の中でもお気に入りの暴力的なエピソードをリストアップしてるのだ、と言うMek-QuakeにHammersteinは…。こちらを描くはMark Sexton。あのVertigo『Mad Max : Fury Road』の後ドレッドを何作か手掛け、すっかり2000ADファミリーの一員となってる様子。
そして、この40周年記念号では今期冬休みだった巨匠Pat Millsが、この『Ro-Busters』と『Slaine』の2本立てで登場!しかも作画は両作とも本編と同じClint Langley画伯とSimon Davis画伯という豪華仕様!さてこの『Ro-Busters』だが、あの『ABC Warriors』の前身にあたる作品で、詳しくは『ABC Warriors : Return to Ro-Busters』が掲載された2016年冬期を見てちょ。
下右ミドリが 大変キュートな Ro-Jawさんです。 |
HammersteinとRo-Jawの友情を描いた楽しい一編。文句あるか?いや私もう『ABC Warriors : Return to Ro-Busters』でキュートなRo-Jawさんを見て以来すっかりやられてRo-Jawが出てくるだけで嬉しくなるんすよ。そして前作で遂にABC Warriorsに加わったRo-Jaw!今後の活躍が楽しみですな。巻末インタビューでは近年自分の色々な作品をクロスオーバーさせていることについて聞かれた巨匠は、2000ADもマーベルDCみたいに色々な作品をクロスオーバーさせればいいと思うのだよね。2000ADを始めたときに(言うまでもないが巨匠Millsは2000AD初代編集長)もっと作家に言っとけばよかったな。とのこと。実はABC Warriorsについては山ほど書かなければならないこともあると思うのだが、その辺についてはもうすぐやっと始められそうに思う「巨匠Pat Mills未来史シリーズ」を待たれよ。あ、その前に次のABC来ちゃうかも…。
Durham Red : The Judas Strain
Lauren Beukes/Dave Halvorsen/Carlos Ezquerra
タイトルを見て、これは知らないやつだな、と思っていたら、なんとあのStrontium Dogのスピンオフ作品。というわけでイントロページに登場するのは、Johnny Alphaを除いたミュータント賞金稼ぎ部隊の面々。にこやかに40周年を祝おうとした面々だが、いつも一言あるKid(膝に顔のある人)が、おいちょっと待て、これギャラ出んのか?と言い出し、その結果はいつもの…。こちらを描くのは現在『Savage』を手掛けるあのPatrick Goddard!Goddardのベタと描き込みのバランスが絶妙な白黒画はいつ見てもホント素晴らしいんですよね。
で、Durham Redなのですが、Johnny Alphaらの賞金稼ぎ仲間のヴァンパイア・ミュータント美女ということらしい。結構昔からの人気キャラらしいが、近年の『Strontium Dog』では出番がなかったので私的には初見だったのだけど、スタンドアローンのシリーズの単行本も出ています。
荒廃した惑星Tokayで、JohnnyとDurhamは戦争犯罪人Leopold of the Gothaの裁判の証人となる生き残りの住人を探し求めていた。やっと見つけ出したその星の虚弱な原住民の生き残りの女王を説得し、証人を確保したが、Durhamは不可解な行動に出る…。
ヴァンパイアという体質ゆえJohnnyからも少し距離を置かれる美女Durham Redの峰不二子的活躍を描くワンショット。ライターDaveさんのことはちょっとわからなかったのですが、ローレン・ビュークスは日本でも翻訳が出ている南アフリカの作家。『ZOO CITY』出てすぐに買ったのだけどまだ読めてないや。そんなのばっかり…。コミックではVertigoの『Fable』のスピンオフ『Fairest』を6話手掛けています。写真を見たら大変好みのタイプの美女だったので、どちらもなるべく早く読むです。巻末インタビューではコミック・レジェンドCarlos Ezquerra師匠と仕事ができ、大変嬉しいと語っています。誰かね?師匠の描くDurham Redが兵頭ゆきさんぐらいの美女にしか見えないなどと失礼なことを言う者は?
Slaine : Red Branch
Pat Mills/Simon Davis
こちらのイントロページは巨匠Millsの代表作の一つ『Nemesis The Warlock』の敵役の人が大ゴマでこちらに向かって説教してるというもの。『Nemesis The Warlock』は2000号に登場して、ちょっとわかる範囲で調べたりもして説明したのだけどやっぱりあんまりわかっていなかったり…。Mills未来史にも属するのでいずれはちゃんと読む予定なのだけど、今のところはすみません。ちょっとこの説教の内容もよくわかんなかった…。作画はBryan Talbot。英国コミック・レジェンドの一人でオリジナル『Nemesis The Warlock』の共作者であります。いずれちゃんと読むからね。
少年時代のSlaineが部族の精鋭部隊Red Branchに入るためのテストを受ける話。能力的には勝っているが、競争相手は次々と奇策を使い…。
落ちも含め、かなりグロテスクなユーモアに満ちた一編。『Slaine』は現在の「The Brutania Chronicles」と最初のあたり少しぐらいしかまだ読めていないのだけど、その初期からも出自については多く語られる作品なのでこういう話も作れるわけですね。これも今のところのかなりでかい宿題の一つ…。いつかちゃんとやります。『Slaine』は「The Brutania Chronicles」最終章第4部が現在2017年秋期に掲載中!
Nikolai Dante : Devil May Care
Robbie Morrison/Simon Fraser
こちらのイントロページは、編集者ネタらしい。なにかCyber-Mattという人が見つかるのをびくびくしながら読者に40周年のお礼を述べてるというやつなのだけど、こういうのがあんまりよくわからないうちは私もまだまだ2000AD初心者なのだよねと思うのです。
で、とうとう来てしまったよ、『Nikolai Dante』。こちら1997年から2012年までの期間に2000ADに掲載されていた人気シリーズなのですが、私が読み始めたのが2013年からで、その後掲載がなく一度も読んだことがないシリーズなのですよね。いや前から気にはなってたのだけどさ。知らない昔の作品はたくさんあるのだけど、こちらはどうも色々連続した大きな話もあるようで、設定だけ書いてなんとなくわかるというものではなさそうなのですよね、これが。とにかく調べた限りで書くと、27世紀、再び勃興し地球とその周辺を支配しているロシア帝政下で、恋と冒険に生きる盗賊Nikolai Danteの活躍を描くというものらしいのだけど…。
そんなわけで話も細かいところはよくわからなかったのだけど、一応読んだ感じで書いてみると、皇帝のパーティーに出席し、ヘラヘラと楽しむNikolai Dante。だがそこに反対勢力のアサシンが現れ、破壊活動をはじめ、会場は大混乱。すわ、と剣を抜き活劇に臨むDanteであった。というような感じでしょうか。もう終わったシリーズの、ファン向けワンショットだからどうしても難しい…。最後力尽きてしまった感じで申し訳ない。いつかは必ずこれもちゃんと読むでやんす。
巻末インタビューでは、オリジナル製作チームである今回の二人がNikolai Dante誕生の経緯などを語っています。いつかちゃんと読めたらまた読み返してみようっと。『Nikolai Dante』は2000ADのアプリショップの方でもグラフィックノベル全巻揃ってるので、すぐ読めますよう。
というわけで、やっと2000AD2017年冬期終了です。いや、時々疲れて動けない日もあったけど、ほぼ毎日頑張っていたのですよ。しかしずいぶん長くなっちゃったなあ。話が長くなっちゃうのはアリだと思うけど、問題は他のことを書くのが遅れちゃうことなんですよね。とりあえずはまた頑張って他のこともなるべくどんどんやってって、これに懲りずまた2000ADの方も続けて行こうと思いますです。次回春期には『Brink』『Scarlet Traces』『the Fall of Deadworld』『Defoe』という凄いラインナップも来ちゃうのだよ。しかし折しもアメリカではNYCCが開催されている週末だったのだけど、こっちなんとか頑張らなきゃということであんまり情報もチェック出来てなかったり。今日『Constantine』のアニメのトレーラー観たけどどうなるのかね。まあ日本のアニメ事情は特殊なので、特に斜めに見られがちだろうけど、ここはとにかく色々盛り上がるといいね、という感じでイノセントに期待していこうじゃないですか。でもなかなか日本じゃ観られないだろうな…。そういえば『The Boys』に続いてルッカ『Lazarus』もアマゾンでってアナウンスもあったけど日本で観られるのかなあ。とまあコミック関連の楽しいお話も尽きないわけですが、今回はこの辺で。
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