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2016年6月22日水曜日

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] 後編

2000AD 2015年夏期後編です。後半の目玉はデス・ワールドでのDark Judge達の過去を描いた『Dark Judges』。というわけでトップ画像の方は、2015年冬期に掲載された『Judge Dredd』のGreg Staplesが2年かかって完成させたDark Justiceの単行本のものです。Dark Judgeについては、以前よりは少し情報も増えたので、そちらについてはのちほど。


Jaegir : Tartarus
 Gordon Rennie/Simon Colby

2014年春期に6回のミニシリーズとして掲載され反響を呼び、本格シリーズ化され続く夏期に6回のシリーズ、年末スペシャルにはワン・ショットも掲載された2014年最大のヒット作の第3シーズンです。ちなみに画像は、出てくるたびにケチをつけてしまうPaul Marshallなのですが、これは彼の持ち味の気持ち悪いユーモアが生かされていて結構好き。Jaegirはいないけど。
ちょっと設定が難しいシリーズなのでここでまとめておくと、このシリーズ元々は2000ADの過去の名作『Rogue Trooper』と世界観を共有するもので、NortsとSouthersの二勢力が戦争を続けている話で、Rougue TrooperがSouthers側だったのに対し、JaegirはNorts側ということになっています。主な戦場となったのはNu-Earthという惑星で双方が生物兵器・化学兵器を使いまくり惑星は汚染され、常に防護服・マスクが必要で、画像のような姿になっているわけです。主人公の女性士官Jaegirは戦争犯罪捜査チームの隊長で、有力な軍人一家の出身なのですが、母親がSouthersの人間ということで兄弟の中でも疎まれながら育ち、父親との関係も少し複雑なものであったようです。そしてその父親も戦死、兄弟のほとんども戦死しているという状況です。
Jaegirらチームは視察のためTartarus守備隊を訪れる。捕虜の扱いなどに疑問を持ちながら、Jaegirらは表向きの視察の裏で密かに内偵を進める。しかし、司令官らに発覚し、チームは捕縛。JaegirはSouthersの捕虜とともに、基地に隠されていたStorigoiの感染者の獣人たちに襲われる。
Storigoiは第1シーズンに登場したSouthersの細菌兵器で、感染した者は凶暴な獣人と化して敵味方関係なく襲い掛かります。毎回事件と並行してJaegirの回想という形で過去が少しずつ語られ、最後にこの先に続く大きな秘密が少し明かされるという展開。ミリタリー・アクションとしても迫力もあり、申し分ないのですが、背後に見える大きな物語がなかなか始まらないのが少しもどかしいところ。ライターは前編『Absalom』のGordon Rennie。作画Simon Colbyは線とベタの陰影の組み合わせが特徴の上手いアーティストなのですが、なんかいつもJaegirの体にピッタリした軍服が却って色気がないように見えてしまうのだが…。

The Ailienist : The Haunting Of Hex House
 Gordon Rennie & Emmy Beeby/Eoin Coveney

前年の冬の増刊号Winter Specialに掲載された単発の作品がシリーズ化ということらしいです。ちょっとそちらまで手が回らず未見で申し訳ないのですが。20世紀初頭のイギリスを舞台にした女性霊能者Madelynが主人公のホラー作品です。
1908年イギリス。新聞社の主催によりさまざまな呪いが伝えられる屋敷に心霊関係の権威が集められ、呪いの真相解明のための調査が行われる。降霊会が始まると出席者の一人の頭が蝋燭のように溶け始め死亡する。予想外の危険に慌て、出口に殺到する出席者たち。そのとき、Ailianistを名乗る初老の男Sebastianと謎の美女Madelynが現れ、今外に出れば全員死ぬと告げ、彼らを屋敷内に留め、調査を始める。そして、その中からは、当初の曖昧な噂を上回る恐るべき恐怖が現れ始める。
SebastianはMadelynの助手で、実は特別な能力はありません。最初は屋敷内のその道の権威を説得するためにかなりハッタリ的な言動をするので、読み始めたばかりでキャラクターもよくわからない時点では本物なのか読んでる方もよくわからなかったりするのが面白い。二人のやり取りもユーモアがありキャラもよくできている感じ。後半のホラー的な盛り上がりもよく、この先期待できるシリーズになりそうです。ここでまたしてもGordon Rennieの登場ですが、今度は共作で原案ぐらいのところなのかもしれません。Emmy Beebyは2015年冬期の『Survival Geeks』でもRennieの共作者としてクレジットされています。ちょっと他の作品についてはよくわからないのですが、Titan Comicsの『Doctor Who』なども手掛けているようです。ちなみにTitan ComicsってComixologyとかで見てもそこそこ大きめで、てっきりアメリカのパブリッシャーだと思っていたのだけど、イギリスのだったのですね。まだまだ知らないことが多いなあ。作画のEoin Coveneyはアイルランドの結構有名なイラストレーター/コミック・アーティストらしいです。この作品では白黒の迫力のある美しいペン画で、私もまだその辺手を付けたばかりでちょっと知ったかぶり程度ですが、EC、Warrenあたりを思わせる、というところなのではないかと思います。

Grey Area : Contact/First Bite/Feeding Frenzy/Deadline
 Dan Abnett/Mark Harrison

今期は全4回と短く、カバー画像もナシ。異次元の惑星に到着し、その星のGrey Areaに収容されそこにもエイリアンの脅威が迫るのだがBullet達には打つ手も無し、という感じで終わった春期に引き続きの登場です。
前回最後に、絶望した地球人クルーの一人が図った飛び降り自殺を食い止めたことによりGrey Area管理者に貸しを作ったBullet達は、上層部との会見の機会を得て、そこでGod-Starの危険性を訴えることで彼らを含む調査隊の派遣に漕ぎつける。ドローンの降下地点に向かった調査隊は敵の猛攻撃に出会い、多くのメンバーが死亡する。しかしようやくこの事態が星の存亡にもかかわる危機であることを納得させ、対策へと動き始めることが可能になる。だが、近づくGod-Starに彼らの反撃は間に合うのか?
結構おなじみになってきた私も楽しみにしている、もはや英米共に大作家であるDan Abnettによるシリーズ。果たしてBullet達はこの世界でもGod-Starを撃退し、地球に戻ることができるのか?Mark Harrisonのアートは毎回本当に素晴らしく、日本でも一人でも多くの人に見てもらいたい。とりあえずはまず画像検索を!

Dark Judges/Dream Of Deadworld
 Kek-W/Dave Kendall

2015年冬期のDreddの大作Dark Justiceに登場したドレッドの宿敵Dark Judge達の元々の世界デッドワールドでの物語。今回のシリーズはアーティストDave Kendallのイメージをもとに、『The Order』(2015年冬期)などのKek-Wがストーリーを作り上げたものということです。
さて、2015年冬期について書いた時点では、Judge Death初登場の話は読んだものの、3体の同僚Dark Judgeについては不明だったのですが、その後に進んだ『Judge Dredd Complete Case File 05』にその後の話を見つけました。初登場が1980年1月で、続くストーリーは翌81年8月に掲載されました。初登場の話の最後で、ジャッジ・アンダーソンが霊体のJudge Deathを体内に封じ込めたままプラスチックで固められ、事件は辛うじて解決したわけですが、アンダーソンはそのままシティを救った英雄として博物館に展示されています。続く話ではJudge Deathの次元デッドワールドからDeath救出のため3体のDark Judge、Fire、Fear、Mortisが現れ、テレパシー能力を持った男を脅迫し、博物館に展示中のアンダーソンのプラスチックを破り、Deathを解放させます。そして、Dark Judge達はその男の体を使いDeathを復活させ、ひとつの居住ビル(Mega-City Oneでは町ぐらいの規模)をサイコバリアで封鎖し、中の人間たちを殺し始めます。ドレッドも中に入る手段を見つけられずにいるところへ、Deathの解放とともに蘇生したアンダーソンが駆けつけ、その能力でバリアを突破しドレッドとともに中に侵入。バリアの装置を破壊され、追い詰められたDark Judge達は自らのデッドワールドに逃亡。彼らの残して言った装置を使い、ドレッド達も後を追い、アンダーソンがその世界でDark Judge達に殺された人々の怨念とチャネリングすることで4体のDark Judgeを倒します。その後Deathを除く3体のDark Judgeがクリスタルに封印されるまでの長い話がここから続いて行くわけですが、とりあえずDark Judge達の初登場の話はこんな感じで、私が読んでいるのはそこまで。とりあえずまた続きがあったら折に触れ書いて行くつもりですが、『Complete Case File』についてもそのうちにちゃんと書いていこうとは思っています。
今回登場のシリーズは、ドレッドは登場せず、全4回のそれぞれが一人のDark Judgeを主人公としたものです。

1. Fire
生命ある者がすべて消えた世界で一人Judge Fireは回想する。彼のもとを去り水中の城に逃げた彼女を殺した日のことを…。

2. Mortis
全ての者を殺しつくしてしまった世界。Judge Mortisは目的のない虚無的な日々を送っていた。そこに不時着した見慣れぬ宇宙船。生命に満ち溢れた星から来たという異星人の言葉に驚喜し、Mortisは自分もそこに連れて行ってくれと頼む。だが、山のように遺体を積み上げた彼の住処を見てMotisの正体に気付き恐怖する乗組員たち。彼らを全て殺害したMortisは、発せられた救難信号をたどり救助の宇宙船が来る日を待つ。その船がまた多くの生命を奪うために自分をその世界に連れて行ってくれる日を…。

3. Fear
Judge Fearは同僚とともに犯罪である生命を浄化していた日々を回想する。ある日、Fireに挑発されFearはその能力でひとつの建物の住民全てを抹殺すべく乗り込んで行く。中にいる者はFearの姿を見た途端に内なる恐怖のため次々と自滅して行く。だが、最後の部屋にいた少年は両親の復讐を叫びながら正面から彼に向かって来た。少年を窓から放り出し殺害したFear。だが、彼は今でも考える。あの少年にはなぜ自分の能力が効かなかったのか…。

4. Death
世界の罪の浄化が終わった後、Judge Deathはすべてのその世界に残ったJudgeを招集する。同僚の一人、Omenが何者かに殺害されたと告げる。しかしその予知能力で来るべき恐ろしい未来を見てしまったOmenを殺害したのはDeath自身だった。そしてその招集は、真に信用できる自分と同じ意思を持った3人のJudge以外のすべてを抹殺するための罠だった…。

ライターKek-Wはまだ2000ADでは新しい人のようですが、ちょっと調べてみたらミュージシャンでもあるナゾの人。(ホームページ KID SHIRT)ちょっと前に書いたときは名前をKen-Wと間違えていました。すみません。そのうち直します。毎回2000ADでは異例の1ページのタイトルページから始まるというように、アートメインの作品ですが、おどろおどろしいストーリーも見どころです。Dave Kendallはトレーディング・カード・ゲームなども手掛けるイギリスでは有名なイラストレーター/コミック・アーティスト。画像検索すれば素晴らしいアートが山ほど出てきます。ホームページはこちら。(Rusty Baby.com)2016年春期には同コンビによる続編も掲載されています。

前後編に渡りました2000AD2015年夏期も何とか終了です。書いてから気づいたけれどPat MillsのほかにもJohn Wagnerも夏休みと、2大巨匠不在の夏期でしたがなかなかの充実した内容でした。前編最初に書いたような事情ですので、続く秋期についてもすぐに書く予定です。2000号目指して頑張るであります!


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