
つい先日、3月4日にジャック・テイラー最新作『Galway's Edge』が出版され、まだ元気なようでよかったなあと思っていた矢先のことで、本当に残念です。自分的には今読んでる本があと40ページぐらいで読み終わるんで、次は第8作『The Devil』を 読もうと思ってたところだったり。
ブルーウンの死去を知ったのは、3月31日。起きてまずちょっと買い物に出て帰り、色々続きをやらなければとPCを立ち上げたところで、スウィアジンスキーの「Grá Go Mor」と言うタイトルのニュースレターがSubstack経由で届いていて、それを見て 初めて知った。
「Grá Go Mor」というのはゲール語で「Big Love」という意味だそうで、ブルーウンからのスウィアジンスキーへのeメールにいつも書かれていた挨拶ということ。こちらでも使わせてもらった。
かなりがっくり来てしまい、あまり他のことが手につかず、とにかくこの訃報について何か書いておかなければ何も進まないという事態になってしまった。
でも、何書く?「私とケン・ブルーウン」なんておこがましい。私なんぞ、ブルーウンさんの本を読んでいくらかの宣伝になるようここで書いて、それでついでにちょっとした感想やら意見を言わせてもらえるぐらいのもんだよ。
ケン・ブルーウンのジャック・テイラー第1作『The Guards』を初めて読んだときのこと、それはやっぱり喜びや感動だったのだろう。そこにはそれまでのハードボイルドの全てがあり、そして新しかった。こんなやり方でハードボイルドは 続けられて行くのだなあと思った。電子書籍が普及し、日本で翻訳が止まってしまったシリーズも読めるようになった時、そういうものとしてまず最初に手に取ったのは、ジャック・テイラー第3作の『The Magdalen Martyrs』だった。 映画が公開されたにもかかわらず、翻訳も出なかったトム・ブラント・シリーズもまだ最初の『White Trilogy』だけだけど本当に素晴らしかった。
ケン・ブルーウンは、現代、この21世紀初頭ぐらいのところの最高のハードボイルド作家だ。ブルーウンをスキップしてハードボイルドが語れるなんて思ってる奴等はすべてイカサマだ。
「日本におけるケン・ブルーウン」なんてものには何の意味もない。考えるのも、腹を立てるのも、もはや時間の無駄。
本格ミステリなんて御大層な名前の幻想を振り回し、「ミステリ」=犯人当てクイズから永久に「卒業」できない日本のミステリが、ブルーウンを理解できる日なんて永久に来ないよ。
ブルーウン作品が数冊翻訳されただけで、まともに理解もされずぶん投げられた時点で、日本の翻訳ミステリにおけるハードボイルドなんてもんも終わったんだ。
ケン・ブルーウンさん、数多くの素晴らしい本を本当にありがとう。
まだそのほんの一部ぐらいしか読めていないが、どのくらい残っているかわからない残りの人生でブルーウンさんが遺してくれたそれらの作品を楽しんで行きます。
読んだ本についてはまたここに書いて、この国でちゃんと本を読む能力をまだ残している人に伝えて行くのが、私にできるせめてものお返しです。
ブルーウンさんなら、生きてるうちになるべく沢山の本を楽しめよ、と言うんだろうなあ。
どうか、安らかに。
前述のスウィアジンスキーのSubstackの記事について。
ブルーウンへの追悼として、スウィアジンスキーが20年前にDave ZeltsermanのHardluck Stories magazineで行ったブルーウンへのかなり長いインタビューを再録した大変素晴らしい記事です。
さすがという感じで、本当に聞きたいことを聞いてくれている素晴らしいインタビュー。
作家になる以前、世界各地で英語の教師をしていたころの話(ここでは触れられていないが日本にも来たということ)。影響を受けた作家や作品作りについての姿勢など。音楽や、作品内でもしばしばテーマになるカソリックについての考え。 この時点では出たばかりだった『American Skin』(2016)が、シリーズ化を考えていたことなども語られている。
以下のリンクより。Substackのアカウントが無くてもブラウザで見れると思います。
★Substack/Gleeful Mayhem : Grá Go Mor
■Ken Bruen著作リスト
●Jack Taylorシリーズ
- The Guards (2001)
- The Killing of the Tinkers (2002)
- The Magdalen Martyrs (2003)
- The Dramatist (2004)
- Priest (2006)
- Cross (2007)
- Sanctuary (2008)
- The Devil (2010)
- Headstone (2011)
- Purgatory (2013)
- Green Hell (2015)
- The Emerald Lie (2016)
- The Ghosts of Galway (2017)
- In the Galway Silence (2018)
- Galway Girl (2019)
- A Galway Epiphany (2020)
- Galway Confidential (2024)
- Galway's Edge (2025)
●Tom Brantシリーズ
- A White Arrest (1998)
- Taming the Alien (1999)
- The McDead (2000)
- Blitz (2002)
- Vixen (2003)
- Calibre (2006)
- Ammunition (2007)
●Max Fisher and Angela Petrakosシリーズ (ジェイソン・スターと共作)
- Bust (2006)
- Slide (2007)
- The Max (2008)
- Pimp (2016)
●長編/中編/短篇集
- Funeral: Tales of Irish Morbidities (1991)
- Shades of Grace (1993)
- Martyrs (1994)
- Sherry and Other Stories (1994)
- All the Old Songs and Nothing to Love (1994)
- The Time of Serena-May & Upon the Third Cross (1994)
- Rilke on Black (1996)
- The Hackman Blues (1997)
- Her Last Call to Louis MacNeice (1998)
- London Boulevard (2001)
- Dispatching Baudelaire (2004)
- American Skin (2006)
- A Fifth of Bruen: Early Fiction of Ken Bruen (2006) (Tales of Irish Morbidities、Shades of Grace、 Martyrs、Sherry and Other Stories、 All the Old Songs and Nothing to Love、 The Time of Serena-May & Upon the Third Crossの合本)
- Once Were Cops (2008)
- Killer Year (2008)
- Merrick (2014)
- Callous (2021)
●関連記事
Magdalen Martyrs -ジャック・テイラー第3作!-The Dramatist -ジャック・テイラー第4作!-
Priest -ジャック・テイラー第5作!-
Ken Bruen / Cross -ジャック・テイラー第6作-
Ken Bruen / Sanctuary -ジャック・テイラー第7作-
Ken Bruen / A White Arrest -White Trilogy第1作!トム・ブラント登場!!-